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『アナと雪の女王2』日本版予告編を解禁 オラフは武内駿輔、クリストフは原慎一郎が担当

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11月22日(金)に封切られる映画『アナと雪の女王2』の日本版予告編が公開された。

『アナと雪の女王』は、すべてを凍らせる力を持ったエルサと、彼女を救おうとする妹アナの物語を描いたディズニーアニメ。ディズニー史上初の、2人のプリンセスを主人公とした作品だ。2013年に公開された前作『アナと雪の女王』は、日本国内だけで興行収入約255億円、観客約2,000万人を動員。歴代興行収入第3位を記録する大ヒットとなった。全世界興行収入は12億76,48万335ドル(※Boxoffice Mojo調べ)で、90年以上続く歴代ディズニー・アニメーション作品の興行成績をおさめている。続編の『アナと雪の女王2』では、エルサ役をイディナ・メンゼルが、アナ役をクリステン・ベルが引き続いて演じるほか、クリス・バックとジェニファー・リーの両監督が続投。アレンデール王国を治めるエルサとアナの姉妹が、不思議な歌声に導かれ、エルサの“魔法の力”の秘密を解き明かす旅に繰り出す姿が描かれるという。日本語吹替版では、前作に引き続き、松たか子がエルサ、神田沙也加がアナを演じる。

 


解禁された日本版予告では、エルサ役イディナ・メンゼルが歌う新たなメイン曲「イントゥ・ジ・アンノウン」も流れる。松や神田の歌声は確認することが出来ないが、アナがオラフとともに滝に流されながら「声を出しちゃダメよ」と念を押すシーンや、姉妹が語り合う場面も収められている。なお、オラフを武内駿輔が、クリストフを前作に引き続き原慎一郎が担当することがあらたにわかっている。

アナと雪の女王2』は2019年11月22日全国公開。 


Five State Drive、ツアーファイナルシリーズの詳細を発表

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Five State Driveがミニアルバム『We'll be the Next』を引っさげて現在行なっているツアー『WE’LL BE THE NEXT TOUR 2019』ファイナルシリーズの詳細が発表された。

ミニアルバム『We'll be the Next』は、My Hair is BadやHumpBackらが所属する大阪のインディーズレーベル・THE NINTH APOLLOに所属して初リリースとなった作品。今回発表となったスケジュールは、2020年1月4日新宿 ACB、11日福岡 Queblick、19日大阪 Pangea、24日名古屋 CLUB QUATTRO -Tour Final-といった4公演。ツアーファイナルでは豪華バンドが集結するとアナウンスされている。

なお、本日・10月10日20時より先行受付もスタートしているのでお見逃しなく。

Eve、新曲「レーゾンデートル」のMV公開 500人を招待して無料ライブも開催決定

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Eveが新曲「レーゾンデートル」のMVを公開した。

本作品のMVは、川村元気の企画・プロデュースのもと、アニメーションディレクターを中山竜、キャラクターデザイン・イメージボードを米山舞、クリーチャーデザインを7ZEL、アニメーション制作をENISHIYAが手掛けている。「レーゾンデートル」は、専門学校HAL(東京・大阪・名古屋)CMタイアップソングとしてTVCMでオンエアされている。

また、10月30日(水)に渋谷WWWXで行われる無料招待ライブ『CANDY』の開催も発表された。このライブにはApple MusicもしくはiTunesをダウンロード購入した人の中から抽選で500人が招待される。詳しい応募方法は特設サイトを確認しよう。

 

星グランマニエ×白鳥松竹梅×タブゾンビの同級生コラボにATSUSHI(Dragon Ash)が飛び入り参加、ヘスの醍醐味に沸いた『THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL 2019』DAY2【与論ステージ】レポート

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THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL 2019
2019年10月6日(日)鹿児島市・桜島多目的広場&溶岩グラウンド【与論ステージ】


■宇徳敬子

宇徳敬子

宇徳敬子

昨日のZIGGYと同様、フェスで宇徳敬子のライブを観られるなんて、そんなことありますか? 宇徳は鹿児島出身なので、ヘス的には彼女が出演する意義は大いにあるのだけど、様々なフェスに慣れてしまった体には、こういう意表を突いた人選がたまらない。

アコースティックギターとパーカッションを従えた宇徳は、真っ白い衣装に身を包んで爽やかに登場。今日もまた猛烈に暑くなることを考えると、今日は彼女のステージが唯一の清涼剤みたいなものだ。注目のライブはまず、TVアニメ『名探偵コナン』のエンディングテーマだった「光と影のロマン」、「あなたは私のENERGY」と90年代のヒット曲を続けざまに披露。サウンドこそアコースティックで落ち着いた雰囲気だが、間奏では“ヘイ! ヘイ!”と観客に拳を挙げさせるなど、盛り上がりは熱い。

嬉しかったのは、続いて披露された「ゆめいっぱい」~「想い出の九十九里浜」~「Please Please Me, LOVE」というB.B.クィーンズ&Mi-Keメドレー。当時誰しもが耳にしていたはずの「ゆめいっぱい」は心の深い部分をやさしくえぐってくるし、「想い出の九十九里浜」ではあちこちで振りコピをしている観客の姿も。そして、タイトルを言われてもピンとこなくても、曲を聴くと身悶えするほど懐かしい「Please Please Me, LOVE」もたまらなかった。これらの楽曲を、当時と変わらぬ清涼感あふれるボーカルで聴かせる宇徳はさすがである。

宇徳曰く、“マグマのような熱さ”のなか続いたライブのエンディングは「鼓動~誰よりも君を愛してる~」。3年前に発表したアルバムの最後を飾る楽曲だ。そう、彼女は活動休止期間を経て、2010年代は積極的な活動を繰り広げている。今の曲だからかどうかはわからないが、かつてのヒット曲以上にこの曲のボーカルがよかった。宇徳敬子は今を生きているのである。それを証明したヘス2日目の朝だった。

取材・文=阿刀 “DA” 大志

宇徳敬子

宇徳敬子


■SHIMA

SHIMA

SHIMA

火山灰より土埃の方が凄まじいんじゃないか?という炎天下の狂騒空間を作り出したのは、北九州出身バンドのSHIMA。リハの段階で、フロントマンのEGACCHO(Vo)はステージ前の光景に不安を感じたのか、「ビール買ってる人とかこっちに連れてきて!」と、動員を要請。その一声が功を奏したかは不明だが、スタートの時間には与論ステージの前はかなりの人数が集結。

「ステージ規模小さいですね! でも関係ない! 今日一番を取りに来ました!」と叫んで、どうやら振り付けやシンガロングが決まっていそうなファストチューン「すすれ-Re 麺 ber-」をフィールドに投下する。ピンボーカルのEGACCHOが謎に美しいロングヘアをなびかせ、暴れ、左右対称にSHINYA SYODA(Ba,Vo)、YUSUKE HIKIDA(Gt,Vo)が構え、トリプルボーカルというか、絶叫やコーラスを加えていく。よく見るとドラムの明生もコーラスを入れている。ほんのちょっとしたきっかけでかなり大きなサークルができ、メロディアスなスカナンバーではみんながステップを踏む。ステージ上もタフだが、このお客さんのタフさは一体……。

PAにリバーヴを要請して、民謡と思しき一節を歌ったEGACCHOは自己紹介を始める。実は鹿児島の大隈地区出身で地区の高校時代は生徒会長も務めたのになぜか不登校になり、別の高校へ。バンドメンバーには大学時代に出会ったと、バンドヒストリーまで達したところで、やはり大隈出身者として、来年はぜひ大隈ステージに出たいと力説。

オーディエンスも大いに共鳴して、後半はウォールオブデスやクラウドサーフも続出する、およそ与論ステージのムードとは異次元の暴れっぷり。EGACCHOが客サイドに降り、センターまで運ばれようとするもなかなか進まず……それも含めて強烈なアジテーター気質を印象付けた。

取材・文=石角友香

SHIMA

SHIMA


■ReN

ReN

ReN

アコギ一音の音色から、ループエフェクターの微調整まで念入りにサウンドチェックするReN。加えて本番前から「Illumination」を1曲プレゼント。今夏、彼のライブを見るのは『FUJI ROCK FESTIVAL』の前夜祭以来なのだが、今日の方がリラックスしているような印象だ。短期間でも試行錯誤を重ね、一人きりのライブスタイルで追加できる武器が増えたのかもしれない。

ライブスタートはファルセットが美しい「What I’m Feeling」。ビートだけでなく、コーラスのループを作ることでReNの作る世界観の背景が立ち上がる気がする。なかなか野外イベントで音がクラッシュする中で静謐な曲を聴かせるのは難しいが、リアルタイム多重演奏を生で見るのが楽しいのか、オーディエンスは食い入るように参加している。その気配を察してか、「桜島、ここのバイブス、この場所でしか鳴らせない音を積み木のように重ねていきたいと思います」と、自身の音楽スタイルと心情をきちんと言い表す。ギターのボディを叩いて作った4つ打ちのビートで、エレクトリックな楽器がないにも関わらず、EDM的なニュアンスを作ることができるのも発見。

テクニカルな部分に目が行きがちだからこそ、シンプルな弾き語りにビートを加えただけの「Friends Forever」では、彼の柔らかさと芯にある強さが同居した歌唱がまっすぐ届き、どこからともなくクラップが起こる。ラストは洋楽でもオントレンドなラテンテイストのコード進行が、硬派なテーマをさらっと聴かせることに成功している「存在証明」を歌い終わると同時に演奏もフィニッシュ。この潔さもReNらしい。

今夏、様々なフェスで雨に遭遇したという彼。今日こそは晴れて欲しいという祈りは桜島の空に届き過ぎたのかもしれない。何れにしても、このまま彼が日本でまだ珍しい道を切り開き、次にどこかで会う時の進化が楽しみだ。

取材・文=石角友香

ReN

ReN


■赤い公園

赤い公園

赤い公園

津野米咲(Gt)がジャキジャキとギターを掻き鳴らし、歌川菜穂(Dr)のドラム、藤本ひかり(Ba)のベースと、一つずつ楽器が重なった「消えない」から、赤い公園のステージがはじまった。

『サツマニアンヘス』は初出演。昨年、元アイドルネッサンスの石野理子(Vo)が電撃加入して、新体制として活動をスタートさせた彼女たちを目撃しようと、与論ステージには大勢のお客さんが詰めかけていた。

キレのある演奏が交錯する「絶対的な関係」、“竜宮城”なんて言葉も飛び交い、ここではないどこかへ連れて行ってくれるような心地好いポップナンバー「Highway Cabriolet」へ。MCはほとんどなし。昔の楽曲と、新体制以降の楽曲とが分け隔てなく演奏されるステージは、1年前リスタートを切った赤い公園が、着実に前へ進んでいることを印象づける。

バンドの顔であるボーカルが変われば、当然、バンドの表情が変わる。石野のボーカルは繊細で喜怒哀楽の機微が鮮烈だ。力強くタイトルをコールした「KOIKI」のあと、この大きな喪失感を可能性に変え、それ自体を謳歌するように藤本と津野が楽しげに向き合いながらプレイした最新ナンバー「凛々爛々」の疾走感は痛快だった。最後は、石野が「桜島サイコー!」と叫んで、フィニッシュ。そうだ、赤い公園は、まだ消えない。

取材・文=秦 理絵

赤い公園

赤い公園


■川村結花&田中邦和

川村結花&田中邦和

川村結花&田中邦和

「駅の中に焼酎バーがあるなんて、私にぴったり」「10月で涼しくて最高って聞かされてたんですが、真夏やん! いつもこんなんですか?」と、観客と大阪弁で会話する川村結花。すごい人なのだが、与論ステージを通り過ぎていく人は説明もしくは、そこで歌われている楽曲が川村の作詞作曲、もしくはそのどちらかの他アーティストへの提供曲と知ると、続々足を止め始めるのである。そして、“ああ!「夜空ノムコウ」の作曲した人!”“ファンモンの「あとひとつ」の人!”と、理解した順に人が増えてくるのは、有名無名という意味では違うのだが、まるでストリートライブのようで、曲や演奏の力がめちゃくちゃ如実に表れている。

今回は20年来の知り合いであるサックス奏者の田中邦和と歌とピアノとサックスで、シンプルに聴かせるかと思いきや……。

「こんな感じの空気、すごく懐かしい。私、大阪出身でおじいちゃんとおばあちゃんが鉄工所やってたんです、川村鉄工所っていう。そこの周りにご飯屋さんがあって、そんな匂いがする。おじいちゃん、おばあちゃんの匂いに包まれて初めてやるわ、なんか涙出そうになってきた」と、その名も「川村鉄工所」と題された曲を歌い始める。懐かしい昭和の鉄工所の昼休みの光景が、田中の包み込むようなサックスで郷愁の色を深める。京阪沿線の地名が出たりして、個人的には肉屋さんのコロッケの味がわかるぐらいの解像度だ(筆者は大阪、京阪沿線出身なもので)。もはや観客は曲を知ってる・知らないなんて関係なくなっている。

ラストは川村の新作『エチュード』で田中が“吹き語り”デビューしたという「ロウソクの灯が消えるまで」で、音楽に対する愛をスタンダードジャズの趣きと田中の美声も含めて、真夏なのにクリスマスプレゼントみたいな気分になったのも、音楽の力じゃないだろうか。シンプルかと思いきや……というのは、ゴージャスさというのは音数の多い少ないじゃないという意味でだ。なんてゴージャスな時間だったのだろう。川村さん、心ゆくまで焼酎、行っちゃってください。

取材・文=石角友香

川村結花&田中邦和

川村結花&田中邦和


■星グランマニエ(from 氣志團)

星グランマニエ(from 氣志團)

星グランマニエ(from 氣志團)

少しずつ暑さが和らいできた与論ステージ。ギター1本でステージに現れたのは、昨日、大隅ステージに出演した、鹿児島出身の氣志團のギター、星グランマニエだ。

優しくアコースティックギターをつま弾き、ロマンチックな物語を描くように「一番星」を歌うと、MCでは「こんな桜島のふもとでできる機会もないので、思いっきり楽しんでいきたいと思います」とゆるい口調で語りかけた。

中盤、高校の同級生だったというSOIL&“PIMP”SESSIONSのタブゾンビを呼び込むと、早速、タブは「恰好と歌声のギャップ! 声、透き通りすぎっ!」と、ランマをイジる。そんなふたりで「オールナイトロング」を届け、がっしりと抱擁。さらに「もうひとりの同級生」として氣志團の白鳥松竹梅(Ba)も招き入れ、地元の焼酎(さつま白波のお湯割り)で乾杯して、鹿児島の民謡「小原節」を演奏した(この選曲も絶妙!)。そこに、大隅ステージでライブを終えたばかりのDragon Ashのダンサー・ATSUSHI(と鹿児島の妖精カゴッシー)も加わり、最後は、ランマが亡くなったおばあちゃんのために作ったという「地球」を、「こんな近くで歌える……ばあちゃん、ただいま!」という感極まったような言葉と共に届けて、大団円。かつて同じ教室に机を並べていた同級生たちが、それぞれ別の道を進み、こんな場所で再び一緒に音楽を奏でる日が来るなんて。これぞ地方フェスの醍醐味だろう。

取材・文=秦 理絵

白鳥松竹梅、星グランマニエ、ATSUSHI、タブゾンビ

白鳥松竹梅、星グランマニエ、ATSUSHI、タブゾンビ


■SPECIAL OTHERS ACCOUSTIC

SPECIAL OTHERS ACCOUSTIC

SPECIAL OTHERS ACCOUSTIC

入念なサウンドチェックから、そのまま何も言わずに本編の1曲目「STEADY」がはじまったSPECIAL OTHERS ACCOUSTIC(以下、S.O.A)は、昨年、SPECIAL OTHERSとしてヘスに出演。形態を変えて、今年も桜島に帰ってきた。

宮原“TOYIN”良太(Dr)のドラムと、又吉“SEGUN”優也(B)が奏でるウクレレベースが心地好く重なり合い、柳下“DAYO”武史(Gt)が奏でる繊細なアコースティックギターの旋律が美しくループするなか、芹澤“REMI”優真(Key)はグロッケンとピアニカを使い分けて演奏をする。その音色によって、ときにキラキラとした幻想的なムードに包まれ、ときに郷愁を誘う牧歌的な雰囲気に変わったりと、本家・スペアザとは一味違う柔らかな気配が与論ステージを包み込んだ。それでも、曲のなかで次々と表情を変える躍動感のグルーヴによって否応なしに体が踊ってしまう、あの陶酔感はS.O.A.も変わらない。大きく刻んだリズム「WOLF」は終わりゆくヘスの物寂しいロケーションにもにぴったりだった。

「また来られてうれしいです」「この先、20年ぐらい呼んでほしい」と、宮原と芹澤が素直に喜びを伝えたMCのあと、ラストの「LINE」では、「ぶっつけ本番で出演を快諾してくれた」というDragon Ashのダンサー・ATSUSHIがサプライズで登場。4人が鳴らす音にシンクロする美しいパフォーマンスと共に、デビュー5年目を迎えたS.O.A.サウンドがヘスの夕暮れを優しく彩った。

取材・文=秦 理絵

SPECIAL OTHERS ACCOUSTIC、ATSUSHI

SPECIAL OTHERS ACCOUSTIC、ATSUSHI


■チャラン・ポ・ランタン

チャラン・ポ・ランタン

チャラン・ポ・ランタン

マキシマム ザ ホルモンの裏でチャランポ――もう、楽しそうな予感しかしません。昨年のヘスでめちゃくちゃにヤラかして、傷口に塩ぐらいの勢いで強烈な印象をすり込んだ姉妹が今年も帰ってきたのだ。しかも、大人気バンドの真裏という、苦戦しか想像できない状況。主催側は“彼女たちならきっとなんとかしてくれる”という期待も多分に込めているのだろう。逆境であればあるほど彼女たちに対する期待度が上がってしまう人はほかにもきっといるはずだ。

ステージに現れた2人は、まず向かい合ってお辞儀をし、くるっと客席に向き直す。そして、「みなさま、ようこそ!」というもも(Vo)の挨拶とともに、アコーディオンの小春が「置行堀行進曲」を奏でる。昭和初期のような哀愁漂うメロディは、ももの朗々と歌い上げる声もあいまって時代の錯覚が起きるほど。

「進め、たまに逃げても」「ムスタファ」といった人気曲をメドレーで披露し、「最後の晩餐」では小春がくるくるとスピン。このせいで大汗をかいた小春はのちのMCでボヤきまくり、「ヒキコモリ」へとつないでいく。これはBay City Rollers「Saturday Night」の替え歌カバーで、<電話も出ないし 既読スルー 外、出ない 外、出ない>という歌詞が秀逸な曲。去年も演奏しているのだが、今年は反応のよさが段違い。去年のヘス出演を機に鹿児島を訪れる機会が増えたそうで、その効果がこうやって現れているのだ。

チャラン・ポ・ランタン

チャラン・ポ・ランタン

ラストは恒例の写真撮影OKタイム。歌うは「愛の讃歌」。ももはステージを降り、マイクのコードの限りにフィールドを練り歩く。観客の男性に肩車をされ、最後の一節を高らかに歌い上げるももは、昭和の名歌手が重なるぐらい輝いていた。そして、小春が奏でる「ジェンガ」のメロディに乗って、ももは椎名林檎がパフォーマンス中の大隅へと向かうのだった――。

取材・文=阿刀 “DA” 大志

チャラン・ポ・ランタン

チャラン・ポ・ランタン


■Survive Said The Prophet

Survive Said The Prophet

Survive Said The Prophet

リハで宇多田ヒカルの「Flavor of Life」を思い切りエモーショナルに歌い、「みんなにとって最高の夜になりますように」と言ったんソデに下がった5人。そのちょっとキザな言い回しが、ライブが進むにつれて全くキザに思えなくなるアクトだった。ハードなのに、メロディの中には祈りのような神聖さが伺える。エクストリームなバンドが多勢を占めた今日のアクトの中でも個性が際立つ。

一つのバックライトに照らされて歌い始めたYosh(Vo)。劇的な皮切りからマキシマム ザ ホルモンでもまだ暴れたりないキッズがクラウドサーフを決める。しかしサバプロの魅力はラウドでエモいだけじゃないとすぐ分かる。ツインギターを生かした重厚で荘厳な響き。スクリーモの真髄を見せるようにシャウトからコーラスワークの美しい主旋律まで縦横無尽の「found&lost」。この曲の冒頭でYoshは一人ひとりを指差し、「お前ら一人ひとりを見つける!」と叫ぶ。時間や空間をイメージさせるSE使いも上手い。演じるようにアクションするYoshはピンボーカルとしてバンドの看板を張る気合いを感じるし、Yudai(Ba,Vo)のローがしっかり出たベースは楽曲のスケールを拡張する。

歌い上げるバラード「Follow」で音楽的なレンジの広さも証明しつつ、「こんなしっとりしたフェスで終わらせることはできないんですよ」という敬語のMCもいい引っ掛かりを残す。「来年はあっち(薩摩か大隅)で会おうぜ!」と、分厚いアンサンブルで地底を揺るがすような演奏を見せ、地球から姿を消すように暗転したラスト「Network System」の演出も見事だった。ステージの大きさに関係なく当然のようにベストを尽くす。果たして来年は? 気になるところだ。

取材・文=石角友香

Survive Said The Prophet

Survive Said The Prophet

■城南海

城南海

城南海

2日間に渡る『THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL 2019』もいよいよ大詰め。サンボマスター・山口が「勝手に死んでんじゃねえ!」と、力技で再会を約束させた後、与論ステージではクロージングアクトの城南海がリハで「まだ帰らないで!」と茶目っ気たっぷりにアピールしていた。

ギター、ベース、キーボード、パーカッションというフルセットである。たゆたうようなピアノとほんの少しコブシが効いた彼女の歌唱が、海に漕ぎ出すような「晩秋」でライブはスタート。<つぎの季節で笑えるために>というサビの歌詞が心情的にはしっくりくる。サビ始まりの印象的な楽曲に聴き覚えがある人も多いだろう「サンサーラ」(『ザ・ノンフィクション』テーマ曲)は、さらにコブシの力強さが生きる曲だ。もうこの段階で残っていてよかったと思う人が多数だったんじゃないだろうか。

奄美大島出身で、鹿児島で中高5年間過ごしたという彼女。「ただいま~!」の声に返される「おかえり~」は、いわゆるライブのテンプレとは違う印象だ。本当の親戚のようなニュアンスとでも言えばいいのか。続く去年の大河ドラマでお馴染みになった「西郷どん紀行」は、懐かしい唱歌とシマ唄、さらにオペラが出会ったような大作。壮大な世界観に続いては奄美の仕事歌「イトゥ」をオーディエンスに指南するというバラエティの豊かさ。

「もうお店の人たちも出てきてください! “ヘス”最後の曲ですよ!」というナンバーはボッサハウスのようなビート。カチャーシーに似た踊りを始めるとタブゾンビを始め社長たちも登場。彼女がタイトルを明かしたところでわかったのだが、この日登場した川村結花による「アカツキ」だ。またしてもDragon AshのATSUSHIがダンスでオイシイところを持って行ったが、主催者としての挨拶の水を向けられたタブソンビが枯れきった声で「来年も会いましょう!」と言い切り、それを受けての拍手はとても温かかった。

取材・文=石角友香

城南海、タブゾンビ、社長

城南海、タブゾンビ、社長

 

椎名林檎の鮮烈な歌に酔いしれ、Crossfaithの熱演にウォールオブデスが発生した『THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL 2019』DAY2【大隅ステージ】レポート

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THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL 2019
2019年10月6日(日)鹿児島市・桜島多目的広場&溶岩グラウンド【大隅ステージ】

■BACKSKiD

BACKSKiD

BACKSKiD

2日目も快晴に恵まれた『THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL 2019』。間もなく始まる薩摩・大隈エリアの上空を鳶が旋回している。ああ、自分は東京ではない場所にいるんだなと実感する。

大隈ステージの口火を切ったのは「WALK INN FES! 推薦 鹿児島アーティスト」で、薩摩産メロディックパンクバンドを自称するBACKSKiDだ。ツインボーカルが特徴で、特にモヒカンをガッチガチに固めた上にバンダナを巻き、ジーンズの上下を着たカン(Vo/Ba)は、カントリー・パンクボーイといった佇まい。人の良さそうなキャラだが、ステージ上を縦横無尽に歩き回り、巨体でジャンプする。カン(Vo,Ba)、シモン(Vo,Gt)、LOVE一郎(Dr,Cho)、3人が3人ともキャラが全く違うのも、むしろパンクが生活に染み込んでいる印象を持つ。

メロディックパンクは朝一、そして自然の中で鳴らされるとハマることは昨日も(朝一とまではいかなかったものの)体感したが、彼らの音色や歌声、コーラスには“今日を始める”気分にすんなりマッチする。その理由が何なのだろう?と思いながら見ていたのだが、中盤、シモンが『WALK INN FES!』は今いる大隈ステージのちょうど後ろにあたり、そこを経て今、自分たちはここにいること、いつもはこのエリアはただの更地で、ライブを行うために誰かがステージを作り、この場を運営していること、さらにその“人”にはみんなも含まれていることと話した。

「鹿児島から来た人?」と問うと、9割手が上がったのも印象的だ。ラストはこの地で生き、この地でバンドを続ける自分や見守る人たちに捧げる、ファイティングソング、その名も「Fighting man song」。ここで生きて音楽をやっていく――そんなバンドの姿を見た。

取材・文=石角友香

BACKSKiD

BACKSKiD


■Base Ball Bear

Base Ball Bear

Base Ball Bear

ワン、ツー、スリー、フォー!という威勢のいいカウントを合図に「17才」から、Base Ball Bearが始まった。今日も快晴の桜島。うっすらと雲がかかる青空の下にベボベはよく似合う。

スリーピース編成になってからは年を重ねるごとに、タフに、芳醇に、強化されてゆくバンドアンサンブル。そのうえで紡ぐ、小出祐介(Vo,Gt)と関根史織(Ba,Cho)の男女ハーモニーが、大隅ステージに真空パックされた青春を鮮やかに描き出す。堀之内大介(Dr)のカメラパフォーマンスもばっちりだ。

秋らしい新曲ができた、と届けた「今は僕の目を見て」に続けて、強力なライブアンセム「ポラリス」では、関根と堀之内が順番にボーカルをとり、次々と主役のポジションを入れ替えながら昂揚感を高めていく。「桜島!」「鹿児島!」「サツマニアン!」というコール&レスポンスからなだれ込んだのは「The CUT」。原曲でRHYMESTERを迎えるラップパートを小出自らハンドマイクで歌うと、会場からは熱い喝采が湧いた。メンバー同士が何度も向かい合い、その時間を楽しむように演奏する姿もいい。

躍動感のあるグルーヴのなかで心を蝕む閉塞感を歌う「Stairway Generation」のあと、小出が「みなさんにとって、この、夏みたいな秋の日が素敵な思い出の1日になりますように」と届けたラストソングは「ドラマチック」。<さぁ、熱くなれるだけ 熱くなればいい>と放つメッセージが、まだ幕が開けたばかりのヘスの期待感を加速させてくれた。

取材・文=秦 理絵

Base Ball Bear

Base Ball Bear


■FLOWER FLOWER

FLOWER FLOWER

FLOWER FLOWER

FLOWER FLOWERのライブはリハから見逃せなかった。なんと、長渕剛「ろくなんもんじゃねえ」のコーラスからYUI「CHE.R.RY」へ、そして再び「ろくなんもんじゃねえ」に戻るという『サツマニアンヘス』ならではの特別仕様。これで一気に観客がステージに詰めかけた。

本編は「神様」で始まった。<耳ざわりだよ 中身がないんだよ>という辛辣な歌詞が、ハードでエッジの立ったバンドサウンドに乗って大隅を切り裂く。間髪入れずに始まった「パワフル」は変拍子を生かした複雑な構成だが、yuiのメロディセンスがすべてをキャッチーに聴かせ、ダイナミックな演奏とともに、決してマニアックなところには落とし込まない。これはFLOWER FLOWERというバンドの魅力が詰まった名曲だ。ミディアムバラード「とうめいなうた」もsacchanのタイトなドラムを中心にスリリングな演奏で聴かせる。鹿児島出身mura☆junの鍵盤も実にドラマチックだ。その一方で、mafumafuのベースは派手に動き回る他のプレイヤーをどっしりとボトムで支えている。このバランスがFLOWER FLOWERをただのいいバンド以上の存在にしている。

それにしても、mura☆junは引き出しが豊富だ。流れるようなピアノサウンドで魅了したかと思えば、「踊り」では鋭いシンセサウンドで耳をつんざくようなフレーズを繰り返し、タイトルどおりダンスチューンに仕上げる。ラストの「バイバイ」まで、多彩なサウンドで観客を全く飽きさせなかった。ていうか、もう30分経ったの? はやっ!

取材・文=阿刀 “DA” 大志

FLOWER FLOWER

FLOWER FLOWER


■Crossfaith

Crossfaith

Crossfaith

いやぁ、なんと言ったらいいのやら……。「30分でこんなにいろいろやれんだ!」「盛り上げ方って自由だな!」「てか、Crossfaith、狂気が増してる!」っていうのがざっくりとした感想。Koie(Vo)の咆哮とともに始まった「Monolith」から最後の「The Perfect Nightmare」まで、大隅ステージは狂気と歓喜と火山灰にまみれっぱなし。すべての曲で何かを仕掛けるKoieは完全に場を掌握してたし、初見の観客が多かったフィールドも彼らのパフォーマンスに十分応えていた。

Crossfaith

Crossfaith

途中、演奏をいったん落ち着かせて、彼らの前に薩摩ステージに立っていたきゃりーぱみゅぱみゅを引き合いに出して、「俺たちはファッションモンスターじゃなくて、ガチなモンスターだから」なんて笑わせてたけど、それ、ただの冗談じゃなくて本気だったから。「Wildfire」でタオルを振り回させるのなんて子供の遊びのようなもんで、「ひとつやりたいことがあるねんけど」とPA卓があるフィールド後方の白いテントを中心にしたサークルモッシュを提案して、大喜びのキッズたちがバターになりそうな勢いで高速大回転。『サツマニアン』って比較的平和なフェスだと思ってたけど、ヘス史上最も治安が悪化する瞬間(いい意味で)をCrossfaithが生み出したといっても過言ではない。

最後は、Koie自ら客席に突入して、ウォールオブデスまで発生させる始末。これが2回目の鹿児島公演だなんて鼻で笑ってしまいたくなるぐらい、Crossfaithは『サツマニアンヘス』をぐっちゃぐちゃに引っかき回して去っていった。

取材・文=阿刀 “DA” 大志

Crossfaith

Crossfaith


■ORANGE RANGE

ORANGE RANGE

ORANGE RANGE

イーヤーサァサァと、沖縄の伝統的な掛け声をサンプリングしたSEが流れ出すと、ORANGE RANGEのライブが「上海ハニー」からキックオフ。HIROKI(Vox)、RYO(Vox)、YAMATO(Vox)というフロント3人が代わる代わるボーカルをとり、「海を隔てた沖縄と気持ちをひとつにしよう」と言って、沖縄の踊り=カチャーシーをレクチャーすると、一気に会場のボルテージはマックスだ。

灼熱の太陽がよく似合う爽やかなポップナンバー「Ryukyu Wind」から「以心電信」へ。エレクトロなサウンドを取り入れたキャッチーな楽曲と親しみやすい話術で、お客さんを魅了するORANGE RANGEのライブは、そこにいる人たちを誰ひとり置き去りにしない。MCでは「暑すぎ。こんな半そで短パンで暑いんだから、きゃりーぱみゅぱみゅはもっと暑かったぞ。褒めてあげろ。それより、もっとスゴいのは、朝から盛り上がってるみなさんです。おつかれー!」と、HIROKI。

朝からいろいろなアーティストに「盛り上がれ!」と言われて大変だっただろうから、ORANGE RANGEは緩くやると言ったが、そもそも生粋のライブバンドである彼らが、ライブで遊べる要素を徹底的に詰め込みまくった楽曲群がそれを許さない。リリース前の新曲ながら、コール&レスポンスやタオル回しで盛り上がった「Enjoy!」に続けて、「イケナイ太陽」、さらに、NAOTO(Gt)と YOH(Ba)が大暴れしながらプレイした「キリキリマイ」まで。結成18年を誇る実力派バンドが手加減抜きで挑みかかる猛攻にフィールドは終始湧きっぱなしだった。

取材・文=秦 理絵

ORANGE RANGE

ORANGE RANGE


■Dragon Ash

Dragon Ash

Dragon Ash

何よりも最初にゲストベーシスト・T$UYO$HIをKj(Vo/Gt)が紹介してから、これぞミクスチャーロックな「Mix it Up」をプレイ。HIROKIによるギターソロもトム・モレノへのリスペクトが感じられ、ニヤリとさせられる。パンクでも、メタルでも、ラウドでもない、ミクスチャーロック。ヘヴィさばかりを重んじるのではなく、BOTSのDJに象徴されるようにオールドスクールなヒップホップへのリスペクトなどを飲み込んだのが90年代に隆盛を極めたミクスチャーロックだが、Dragon Ashは時間をかけてさらに深化させていて、それは今も止まらない。最新曲「Fly Over feat. TSUYOSHI」や浮遊感のあるギターが印象的な「Jump」のような楽曲からもそれは感じられる。

MCのあと、最初のほんの1音で大きな歓声が上がったのは「百合の咲く場所で」。フィールドを隅々まで見渡しながら、Kjは歌詞を変え、笑顔を見せながら歌った。「今日だけ夏が戻ってきたみたいだね!」

しかし、キッズが最も待っていたのは「Fantasista」だろう。時を超えて愛されるジャパニーズ・ミクスチャーロックの名曲にサツマニアンは歓喜のシンガロング。こうして30分に及ぶミクスチャーショーは幕を閉じた。最後は、The BONEZ「Thread & Needle」をアレンジしたトラックが流れる中、メンバー一同サツマニアンに向かって深々と頭を下げ、KjはJESSEがプリントされたThe BONEZのTシャツを高々と掲げた。そこに言葉はなく、観客はただ温かい拍手を贈るのだった。

取材・文=阿刀 “DA” 大志

Dragon Ash

Dragon Ash


■coldrain

coldrain

coldrain

ハナレグミがチルタイムを演出し、時間帯的にもいくぶん涼しくなってきた桜島にcoldrainが再び火をつけた。まずは、「REVOLUTION」「ENVY」という人気曲で彼らにとって初となる鹿児島の地の感触を確かめる。そして、「(彼らの次に薩摩に登場する)マキシマム ザ ホルモンのためにあなたたちの体力1ミリも残すつもりありませんから!」と観客を挑発し、「FINAL DESTINATION」へ。終始安定したパフォーマンスを見せる彼らだが、なかでも「NO ESCAPE」は特によかった。キャッチーな歌メロを引き立たせるY.K.CとSugiによるツインギターがグイグイと曲を牽引し、実際のBPM以上の疾走感を吹き込んでいた。初の鹿児島で若干勝負に出たところもあったと思うが、新曲「THE SIDE EFFECTS」もいい反応を得られていたようだ。これには「いいね! いいね!」とMasato(Vo)。そして早くも、「来年もよろしくお願いしますね!」と運営側に2020年に向けて出演アピール。言葉だけではなく音楽で示すかのように、「F.T.T.T」では1度2度とサークルピットを作らせ、ラストへ向けてキッズとともに駆け抜けていく。

「回りてぇヤツ、まだまだ回っていいぞ!」と最後は「THE REVELATION」。ここでステージ袖から飛び出してきたのはCrossfaithのKoieだ。ヨーロッパを中心としたメタルシーンを騒がせている日本のバンドの両巨頭による共演に、フィールドが湧いた。モッシュ、サーフ、リフトとキッズも好き勝手に遊び倒し、これ以上ない形でホルモンへとバトンが渡された。

取材・文=阿刀 “DA” 大志

coldrain

coldrain

■椎名林檎

椎名林檎

椎名林檎

昨年はSOIL&“PIMP”SESSIONSの客演で登場した椎名林檎が、今年は単独の出演アーティストとして、宵の口の大隅ステージに立った。

フィールドは超満員だ。鳥越啓介(Ba)が奏でるウッドベースの芳醇な響きを合図に、椎名林檎がステージに現れると、怒号のような歓声が湧いた。1曲目は「丸ノ内サディスティック」。ヒイズミマサユ機(Key)が繰り出すジャジーで流麗なピアノが艶やかなボーカルに寄り添う。

「タブくん! 栗さん!」と言って、タブゾンビとサックスの栗原健を呼び込んだ「マヤカシ優男」で、華やかなホーンセッションへと突入。ピアノのみの伴奏で歌い出した「TOKYO」では、<短く切上げて消え去りたい>と遣る瀬無い心状を嘆き、続く「旬」では、<生きて、生きて、活きて居よう>と歌い切る流れは鮮烈だった。

椎名林檎

椎名林檎

タイトな衣装に早替えし、後半はアッパーな楽曲をたたみかけていく。でんでん太鼓を片手に歌った「御祭騒ぎ」のあと、11月にリリースされるベストアルバムに収録される新曲「公然の秘密」を初披露。椎名はスリリングな演奏に乗せてチューブラベルも叩く。客席に向けて拳銃を撃つパフォーマンスから「殺し屋危機一髪」へとなだれ込むと、ラストを飾った曲は「カリソメ乙女」。ハンドマイクで歌いながら、曲中で「鹿児島?」「桜島?」と観衆を煽る。全8曲。MCはなし。タブゾンビと栗原がほぼ全曲に参加するという完全にヘスのためだけに用意された演目はあまりも贅沢。去り際にマイクをステージに置き、椎名がステージを離れたあとも、しばらくの間、歓声が鳴りやまなかった。

取材・文=秦 理絵

椎名林檎

椎名林檎


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きゃりーが老若男女を楽しませ、サンボマスターが今年のヘスに伝説を残した『THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL 2019』DAY2【薩摩ステージ】レポート

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THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL 2019
2019年10月6日(日)鹿児島市・桜島多目的広場&溶岩グラウンド【薩摩ステージ】

■SIX LOUNGE

SIX LOUNGE

SIX LOUNGE

今日は火山灰がめちゃくちゃ降っている。これが鹿児島に住む人の日常なんだなと思う。日本中、同じ野外フェスはないのだ。

そんなことを思いながら、薩摩ステージにも容赦なく火山灰は降っているはずだが「めちゃくちゃ気持ちい!」と、SIX LOUNGEのヤマグチユウモリ(Gt,Vo)は叫ぶ。この2020年を目前にした今の時代に最強にロマンティックなロックンロールを鳴らす3ピース、SIX LOUNGEの登場は、逆に自分の普遍的に好きなものを思い出させてくれる。

レスポールJr.と革ジャンの似合うフロントマン、ヤマグチはのっけから、青春と孤独と苦味と駆け出す心を全て曲と演奏に投げ込んだような「僕を撃て」をまっすぐに歌う。このまっすぐさが今らしさの証左かもしれない。わかりやすい日本語だが、詩情に溢れ、午前中のフィールドには過剰なセンチメンタルが行き渡る。“日本語ロックンロールバンド”を自負していることにも納得だ。

ライブを見るのは初めてなので、ファンの人は何をか言わんやかもしれないが、2曲目に披露した「LULU」なんて、JET(あの「Are You Gonna Be My Girl」でお馴染みのJET、です)のナンバーより切れ味鋭いんじゃないか?というリフ、フレージングの無駄の無さと豊かさに完全にやられる。愚かしいぐらい、心を焦がす早い8ビート。

最高にロマンチックで、どこかボーカルのメロディにはボブ・ディランの「風に吹かれて」に似た普遍性のある「星とメロディ」もしみる。この曲で終わる予定だったはずが持ち時間があったせいか、あまりにもここでのライブが気持ちよかったせいか、もう1曲、旅する気持ちに追い風を吹かせてくれる「幻影列車」でフィニッシュ。彼らが若手バンドとしては珍しく、井上陽水のトリビュート作品に参加している理由が何となくわかった。ロック詩人として優れたヤマグチと、3ピースの拮抗するバランスを構成するナガマツシンタロウ(Dr)、イワオリク(Ba)。今更ながら、いいバンドとの出会いをくれた“ヘス”に感謝を。

取材・文=石角友香

SIX LOUNGE

SIX LOUNGE


■GLIM SPANKY

GLIM SPANKY

GLIM SPANKY

重心の低いロックンロール。うねるような黒いグルーヴで薩摩ステージの空気をガラリと変えた初出場のGLIM SPANKYは、「愚か者たち」で口火を切った。まるでロックを歌うために生まれてきたのではないかと思わせる松尾レミ(Vo,Gt)のハスキーな歌声。その右側に立つ、亀本寛貴(Gt)は70年代ハードロック直系のフレーズを狂おしく弾き倒す。歪んだ音像をバックに<イカサマを嗅ぎ分けていけ>とアジテートする「TV Show」、沸々と湧き上がる衝動を“怒り”と名付けて、試練を越えようぜと高らかに歌い上げる「怒りをくれよ」へ。敬愛するロックとブルースを抱きしめながら、何者にも媚びず、自分たちだけのロックを貫き続けるGLIM SPANKYの佇まいは眩しいほどかっこいい。

「素敵なフェスに出られて、みんなと仲間になれて、うれしいです。こんなに灰が降るなかで歌うのも楽しいものです(笑)」と言う松尾の言葉を、亀本が「ハイになって楽しんでください!」と引き継いだMCのあと、ぐっとテンポを落した「ハートが冷める前に」では、野性味を帯びた“ウォーウォー”というコーラスが楽曲に込めた熱を激しく燃え上がらせる。

終盤、素晴らしかったのは、とりわけ感情を込めて届けたロックバラード「大人になったら」だった。美しいものを美しいと、好きなものを好きと。そんなふうに歌い続けたいと心に誓った松尾レミの原点にあるナンバーは、あまりにも無垢で美しかった。

取材・文=秦 理絵

GLIM SPANKY

GLIM SPANKY


■きゃりーぱみゅぱみゅ

きゃりーぱみゅぱみゅ

きゃりーぱみゅぱみゅ

FLOWER FLOWERが大隅でライブを終えた直後から、薩摩のステージ前ではファンが「きゃりー」コールを繰り返す。それはライブが始まるまで止むことはなかった。そんな熱心なファンに出迎えられたきゃりーぱみゅぱみゅのライブは「原宿いやほい -Extended Intro Ver-」で幕を開けた。4名のダンサーに続いて現れたきゃりーは、さっそく「Clap your hands!」と手拍子を求める。中毒性の高いこのEDMチューンに引き込まれるようにフィールドは人で埋め尽くされ、最後方の観客もぴょんぴょん飛び跳ねている。自分が観ている限り、昨日最も人を集めていたのはMONGOL800だったのだけど、これはそれ以上。きゃりー、強え! ビート感マシマシの「CANDY CANDY -Remix-」も強烈。こんなパンパンのなか、きゃりーは皆を右へ左へと跳ねさせるんだから容赦ない。

これ以上盛り上げたらさすがにヤバいんじゃないか、と思うような状況でぶち込まれたのは「ファションモンスター」。もはや、鬼である。国民的ヒット曲のパワーと影響力のデカさを痛感させる光景が目の前に広がっている。老若男女が音楽を楽しんでいる画はかくも美しい。さっきからやたらと暑くなっているのは、おそらく気温の上昇ではなく、ここに集まった人々の熱気のせいだ。

「とどけぱんち」でいったんクールダウンしたあとは、「にんじゃりばんばん」で再びサツマニアン民を総パリピ化状態に陥れるきゃりー。目の前の光景がどれだけ混沌としていようが、きゃりーのパフォーマンスは決してブレない。しかし、曲の終わりでは皆の熱気に当てられたのか、さすがのきゃりーも給水休憩。そこで明かされたのは、きゃりーのお婆ちゃんが薩摩川内市在住ということ。桜島に来るのもなんと5回目だという。そんな小ネタを挟み、最後に披露したのは「キズナミ」。心地よいビートときゃりーに身を委ね、幸せなダンスタイムでみんなひとつになるのだった。

取材・文=阿刀 “DA” 大志

きゃりーぱみゅぱみゅ

きゃりーぱみゅぱみゅ


■THE ORAL CIGARETTES

THE ORAL CIGARETTES

THE ORAL CIGARETTES

「桜島、はじめまして。我々がオーラルです!」という山中拓也(Vo,Gt)のあいさつから幕を開けた初出場のTHE ORAL CIGARETTESは、『サツマニアンヘス』に“ぜひ出てほしい”というお客さんからのリクエストで出演が叶ったという。

1曲目は、キラーチューン「狂乱 Hey Kids!!」。あきらかにあきら(Ba)が足を蹴り上げながらアグレッシヴにベースを弾き、高い位置にシンバルを構えた中西雅哉(Dr)がパワフルにリズムを刻むと、鈴木重伸(Gt)は華やかなギタープレイで集まったお客さんを魅了する。「もっとかかってこいよ!」と熱くフィールドを焚きつける山中の存在感も圧巻だ。

ゴスペルっぽいコーラスが心地好いグルーヴを生む「What you want」や、ポップなアレンジに合わせて左右に大きく腕を振る「ワガママで誤魔化さないで」へ。次々にバンドの現在地を更新し続けるオーラルは、決して変化を恐れることなく自分自身のパブリックイメージを塗り替えてゆく。

MCでは、「THE ORAL CIGARETTESは“悲しいことを忘れて楽しんでください”とは言いません」と山中。「嫌なことを忘れたら成長しない。だって、彼女にフラれたことを忘れたら、ええ男になれへん(笑)」と笑顔で言葉を重ねると、負の感情を一回り大きな自分に生まれ変わるための糧にして音楽を鳴らす、というバンドのスタンスが強く感じられる「5150」や「BLACK MEMORY」を届けた。

ラストは山中が「隣にいる人を大切に」と優しく語りかけて、「LOVE」。悲しみや孤独があるからこそ、誰かと一緒に笑える喜びもある。そんなメッセージが込められたステージは、“フェスの30分”に妥協しない、バンドの真摯な姿勢も滲み出ていた。

取材・文=秦 理絵

THE ORAL CIGARETTES

THE ORAL CIGARETTES


■SiM

SiM

SiM

今年もサツマニアンに4人の来襲を告げるサイレンが鳴った。開口一番「行けんのかー!」とMAH(Vo)。そして、さっそく「A」のフリーキーなイントロを薩摩に叩き込む。続く「2曲目」も含めて、体の中心からジワジワと侵食するようなオープニング。MAHは積極的にシンガロングを求め、フィールドの一体感を高めようとしている。

MCでは「疲れてる? (ライブを)止めますか?」とひと煽りし、「SiMを知らないという人も、この曲は知らないと音楽好きとしてどうかと思いますよ?」とここで「KiLLING ME」を投入。間奏では全員を座らせ、MAHの合図で一斉に飛び上がらせる。これで火が点いたキッズのノリが激しくなり、薩摩は混沌の色を深めていく。しかし、MAHはそれじゃ満足しない。次の曲の演奏前にどでかいサークルを作るようキッズに指示し、「4曲目」のイントロが始まると同時に高速のサークルピットができあがった。「GUNSHOTS」ではSINが奏でる、うねるようなベースラインが揺らす地面の上で、観客が一斉にモンキーダンス。

SiM

SiM

最後は、12月にあるCAPARVO HALL公演での再会を約束し、「KiLLING ME」に続き、もうひとつ「これぐらいは知っておきなさいよ!」という一撃必殺のレゲエパンクチューン「Blah Blah Blah」を叩き込み、強烈な印象をサツマニアンの脳裏に刻んだ。

取材・文=阿刀 “DA” 大志

SiM

SiM


■ハナレグミ

ハナレグミ

ハナレグミ

メンバー、サウンドチェックからステージに残ったまま、本番スタート。ピンクのシャツが目にも鮮やかな永積タカシが登場してすぐに、タブゾンビからの出演に対するお礼の手紙を読み上げるという、彼らしい感謝の表し方から、「調べたら今日、仏滅だったんだけど、いいよね」と「大安」を歌い始める。ゆるっとしたスタートだが、ツアーを重ねてきたバンドメンバー、石井マサユキ(Gt)、伊賀航(Ba)、菅沼雄太(Dr)、YOSSY(Key)のアンサンブルは骨太だ。風通しのいいアンサンブルが夕方に向かう時間帯にもしっくりきて、ハナレグミ流のレア・グルーヴ「Primal Dancer」ではハンドマイクでダンスしながら多彩なスキャットを聴かせてくれたりも。

永積が歌い出せば、それがスタート。カントリー風の「明日天気になれ」はパッと聴き呑気な曲だが、ここでじっとしてても何も変わらないぜという、一歩踏み出そうとする人の背中を押すというよりは、心の底の思いにそっと火をつける曲だと、改めて感じる。

ハナレグミ

ハナレグミ

自分の曲には景色を描いたものが多いから、今日は今日の景色の中で、飲んだり踊ったり、座ってもいいし自由に楽しんで欲しいと彼は言う。さしずめ海辺に似合いそうな「レター」を桜島の麓で聴くのも大変オツだ。石井のクリーントーンや、少々ジャズ的なアレンジを聴いていると、どこか海外のジャズフェスにでもいる気分(あくまで気分)。

「気持ちいい~! 俺、この会場でここが一番気持ちいい。風が抜ける~」と美味しいものでも食べたような表情を見せる。ステージが一番気持ちいなんて、さすがである。風はただ吹いてるんじゃなく、彼が集めているのだと思う。空気が循環する。ネタじゃなく、深呼吸したい空気なんだから、彼が「深呼吸」を選曲したのも偶然じゃない。それにしてもこの素晴らしい空気ともうちょっとでお別れかと思うと寂しくなってきた。

取材・文=石角友香

ハナレグミ

ハナレグミ


■マキシマム ザ ホルモン

陽も落ちて暴れるには最適な気温になった薩摩ステージには、後方まで老若男女が詰めかけている。

ナヲ(ドラムと女声と姉)が先頭を切って登場、お立ち台から笑顔を振りまき、スターターは今夏の夏フェス仕様になった「恋のメガラバ」。「きたぜサツマニアーン! ちょっと去年、この人(ダイスケはん(キャーキャーうるさい方))が新宿二丁目の営業が入っちゃって」とナヲ。「今日すごくないですか? 楽屋で猿みたいなやつだらけで、YUIちゃんがおののいてて。ご飯食べてても“ヘス”がふりかけみたいにかかってる」とも。そこからの「三度の飯より」「飯が好き!」コール&レスポンスからの「maximum the hormone Ⅱ」。

間髪入れずにデジタルハードコアな打ち込みとバンドサウンドがただただカオスを作り上げる「アバラ・ボブ」へと、まーったく休ませない。「What’s up, people?!」のイントロではン万人のヘドバンに負けじと、ステージ上も4人がバウンドしているかのようなヘドバンを見せる。真っ赤なライトに照らされたクラウドはずっとヘドバンを続けており、その上を転がっていくクラウドサーファーという、なんだかSF映画かゲームの二次元映像を見ているような状況が出来上がっている。

「錦江湾渡るのに1年かかったわ」と、ようやく去年出演できなかった理由をMCするダイスケはん(首のヘルニアで要治療~活動休止)。今夏最後の夏フェスということで、この光景を写真に収めると、ソデに下がったダイスケはん。代わりに“きもとさん”と呼ばれる人物が現れ、ガラケーに広大なフィールドの情景を納めるのだった……。

ライブも20分以上過ぎると最後方の妙齢のご婦人までヘドバンする始末(失礼)。巨大なサークル、ウォールオブデスが「シミ」のサビごとに起こる。ラストはおきまりの“恋のまじない”をあえて説明せずに一発本番で一緒にやれ、とナヲ。しかも、警備スタッフも椎名林檎のステージを準備する白衣のスタッフも絶対参加というゴリ押しで、ここにいる全員が体を反らせる、反らせる。頑張ってきた学生バイトの皆さん、参加できてよかった! いや、ほんとに。ハッピーな混沌で踊り狂う「恋のスペルマ」で大団円。ちなみに野外なのにホルモン後、移動するお客さんで周辺の気温が上がりました。ほんとです。

取材・文=石角友香

 

■サンボマスター

サンボマスター

サンボマスター

今年で2度目の開催となった『THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL 2019』もあっという間にエンディングへ。クロージングアクトを除くと、残るは大トリのサンボマスターのみ。

観客の声援を確認するように耳を傾ける山口隆(Vo,Gt)をはじめとしたサンボマスターのメンバーは、定位置につくなり「青春狂騒曲」をプレイ。そして、山口は叫んだ、「終わりよければ全てよし!」それは、自分たちのパフォーマンスに対する自信の表れのようにも感じた。山口、近藤洋一(Ba)、木内泰史(Dr)の3人が奏でるサウンドは、耳を鋭く刺すようなものではなく、聴き手のそばにやさしく寄り添うように鳴っている。

山口は、フィールドを埋め尽くした観客に歌の合間合間で呼びかける。「大丈夫か?」「女の子を守れよ!」「笑ってっか?」そして、曲の間奏がくるたびに、「ええ~? ウソ……? 大トリですよねぇ? 去年はこんなもんじゃなかったですよ?」と皆を煽る。まあ、ステージ上の3人を超えるほど盛り上がるというのはなかなか難しい。彼らはものすごい感情の情報量で迫ってくるのだから。

「お前と、もうひとりのために」と言って山口が「ラブソング」のイントロを奏でると、やさしい拍手がステージに贈られた。最後のサビに入るまえに、大切な誰かを思い浮かべるための、永遠のように長い間が空き、ここしかないというタイミングで再び山口が歌いはじめる。その間、声を上げる者は誰ひとりとしていなかった。誰もがその時間を噛み締めていた。何も鳴っていない時を3人と共有したんだ。

今年のヘスでは実に多くのサークルピットが生まれたが、最も巨大なサークルは「できっこないを やらなくちゃ」と「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」で起きたものだった。もちろん、むやみやたらな体のぶつけ合いではない。山口の合図で円の中心に駆けていく観客の姿は、自らの思いを遠くの誰かに伝えに行くかのようで、なんだか美しかった。

そして、「輝きだして走ってく」を演奏するまえ、山口はぶちまけた。「おめえが生まれたときから今まで、糞だったことなんて一回もねえんだってことを忘れんなよ! 今日、俺たちはそれを証明しにここまで来たんだよ。おめえが(これまで自分のことを)糞だって思ってきた呪いを解きにきたんだよ!」。多くの観客が涙を流す姿が次々とスクリーンに映し出されていた。「泣いてんじゃねえぞ!」と叫ぶ山口。いや、そりゃ無理だわ。サンボマスターは間違いなく、今年のヘスに伝説を残したのだった。最後に山口はダメ押しで叫んだ、「俺たちからの宿題は、勝手に死んでんじゃねえぞ!」と。

取材・文=阿刀 “DA” 大志

サンボマスター

サンボマスター

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TVアニメ『推しが武道館いってくれたら死ぬ』最新PV&最新キービジュアル公開!舞菜役は立花日菜に決定、先行上映イベントも発表

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COMICリュウwebにて連載中のシリーズ累計発行部数35万部を突破した、平尾アウリによる人気マンガ原作のTVアニメ『推しが武道館いってくれたら死ぬ』の最新PVと最新キービジュアルが公開となった。


合わせてサーモンピンクがメンカラーの内気でシャイな性格のアイドル・舞菜を「アイドルマスターシンデレラガールズスターライトステージ」「CUE!」のキャストとしても活躍中の立花日菜が演じることも発表となった。

さらに、2019年12月15日(日)に“「推しが武道館いってくれたら死ぬ」先行上映&トークショー in(武道館近くの)サイエンスホール”の開催も決定。出演はえりぴよ役のファイルーズあい、舞菜役の立花日菜。2020年の放送に先駆け、アニメ第1話と第2話の先行上映に加えて、トークを楽しめる内容になるとのこと。

TVアニメの放送情報詳細も決定。TBSでは2020年1月9日(木)深夜1:28~、BS-TBSでは2020年1月11日(土)深夜2:00~放送開始になる。

本作は岡山県で活動する地下アイドルグループ・ChamJamと、その熱狂的なファンたちを描いた作品。監督を手掛けるのは『ヤマノススメ』の山本裕介、シリーズ構成を手掛けるのは『恋は雨上がりのように』の赤尾でこ。アニメーション制作には『転生したらスライムだった件』のエイトビットが担当。原作の平尾アウリと担当編集、そしてアニメスタッフ陣からのコメントも到着している。

<STAFF COMMENT>

●平尾アウリ/原作
愛と情熱と作品理解しかない…本当にしあわせなアニメ化だと思っています。
作品にかかわってくださっているみなさまが、原作を本当に大切に思ってくださって、細かいところまで繊細に配慮して進めてくださっています。最高のスタッフさん、キャストさんに恵まれました。
観ていただけたら、絶対にわかると思いますし、わたし自身も本当に楽しみにしています。
ご期待ください!!

●猪飼幹太/担当編集(徳間書店)
スタッフ、キャスト、製作委員会…。本当に驚くくらい、皆様が作品の本質というか魂を、しっかり共感理解したうえで物事を進めてくださっていて、そんな方々とご一緒できる歓びと信頼を日々感じています。
シナリオ会議、アフレコ、宣伝会議…。さまざまな現場で、ひそかに感動に心震える瞬間が幾度もありました。最高に幸福なアニメ化だと思っております。
ぜひたくさんの方にご覧いただきたいです!!

●山本裕介/監督
アイドルには全く詳しくない僕ですが、原作に描かれているえりぴよ達オタクのひたむきな姿に心を打たれ監督をお受けしました。テーマはズバリ「愛」と「笑い」です。
この作品を「アイドル」と「岡山」を推す全ての人に捧げます!

●赤尾でこ/シリーズ構成
人間が二人いるだけでたくさんの物語が生まれます。ましてやその間に『愛』があると物語は無限に枝葉を広げていきます。「推し武道」はその無限の物語を両手で抱きしめてギュギュッと固めて死ぬほど濃い液体を絞り出して・・・「ふー。さて、飲もうか」となったところですっ転んでこぼす。みたいな作品です。切なくも魅力的なえりぴよと舞菜の日々を観ることが、明日は何かを愛してみよう。という気持ちに繋がったら・・・とても嬉しいです。

●日向萌/音楽
実は自分自身が生粋のアイドルオタクということもあり、「推し武道」の世界観は心にしみ入る場面が多く、その気持ちが楽曲に多くの刺激を与えたと思っています。
劇伴制作にあたり、いつも主軸には「推しを想う」というシンプルでストレートなテーマがありました。時にはエネルギッシュに、時には繊細に。まっすぐな想いを音楽でも感じていただけるよう、細部までこだわって作りました。
ぜひ放送をお楽しみください!

●寺田悠輔/プロデューサー・音楽プロデューサー(ポニーキャニオン)
「推し武道」はアイドルとファンの物語ですが、それと同時に「誰かを応援すること」についての物語です。
アイドルのように、誰かに元気を与えたいと頑張る人。ファンのように、頑張る誰かの背中を一生懸命に後押しする人。
自分の人生を使って、自分以外の誰かの役に立てたら。
そんな気持ちがふたつ重なる瞬間は、きっとすごく美しい瞬間だと思います。
原作同様、そんな美しく優しい瞬間を、映像と音楽でも感じていただけたら嬉しいです。

●片山  悠樹/プロデューサー(TBS)
好きな人を応援するすべての人が共感できる作品です。このアニメを見て、応援する側、応援される側の両方が幸せな気持ちになれたら素晴らしいなと思っています。毎話に溢れる圧倒的な愛情をぜひ感じて楽しんでいただければと思います!
 

 

スタッフのコメントからも作品への愛を感じる2020年の冬アニメの期待作。さらなる情報を待ちたい。
 

森田哲矢(さらば青春の光)が脚本・演出、木村昴、鳥海浩輔、山下大輝、田所あずさ、早見沙織が出演 CONTELLING第1回公演の詳細が決定

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株式会社ソニー・ミュージックエンタテイメントと株式会社ホリプロインターナショナルの共同企画による、コメディを朗読劇で楽しむ新朗読劇ブランド・CONTELLING (読み:コンテリング)の第1回公演詳細が発表された。

「CONTELLING」とは、conte(コント)とstorytelling(読み聞かせ) を合わせた造語で、コメディを朗読劇でやることをシンプルに表現したもの。キャストには、声の芝居のプロフェッショナルである声優を配し、脚本・演出には、最前線で活躍しているコント職人でありお笑いのプロフェッショナルであるお笑い芸人を起用。<声の芝居のプロ×お笑いのプロ>という化学反応に観客の笑いが加わる事によって一つの舞台を完成させていくことを目指すというコンセプトだ。

第1回公演タイトルは、『とりあえずウーロン茶』。2019年12月14日(土)~15日(日)よみうり大手町ホールにて上演される。森田哲矢(さらば青春の光)が脚本・演出を手掛け、木村昴、鳥海浩輔、山下大輝、田所あずさ、早見沙織が出演する。また、本公演の前日12月13日(金)には、『とりあえずウーロン茶、その前に』と題したプレトークイベントも開催。こちらには、森田哲矢、木村昴、田所あずさの出演が決定しているという。オフィシャル先行受付は2019年10月12日(土)正午よりスタートする。

森田哲矢(脚本・演出)

森田哲矢

森田哲矢

『とりあえずウーロン茶』何も見ない家政婦、フォロワー0の女、デモ反対デモをする男、依頼が来ない殺し屋、尖ってる薬剤師、なんとなく残念で憎めない人間達が右往左往する冬のとある1日の物語。ーーと、今はそれっぽい感じで言ってますが、実際全然違う感じになったらすいません(笑)。

木村昴

木村昴

木村昴

顔合わせをし森田さんとお話しをした瞬間から、一体どうなるのか楽しみで仕方ありませんでした!あらすじ…気になりすぎます!よろしくお願いします!!

鳥海浩輔

鳥海浩輔

鳥海浩輔

いったいどんなお話になるのかまったくわかりませんが、今からとても楽しみです。

山下大輝

山下大輝

山下大輝

中々無い面白い試みにドキドキしております。皆さんと一緒に楽しみたいと思います!

田所あずさ

田所あずさ

田所あずさ

森田さんの描かれる物語を演じられるなんて…感激で、そして楽しみです!どんな風になるのかまだ想像できませんが、新しい試みにワクワクしながら、皆さまにも楽しんでいただけるよう取り組みたいと思います!

早見沙織

早見沙織

早見沙織

最初の打ち合わせの際、観に来てくださった方に笑顔になって頂けるような朗読劇にしましょう、というお話があったのが印象的です。このような形の朗読劇自体ほとんどはじめてで、また内容も未知数なので、私自身とてもわくわくしています。ぜひ、共にハッピーな12月を過ごしましょう!


クアイフ、3rdシングル「光福論」ジャケットビジュアル&Music Videoを解禁

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クアイフが10月23日(水)にリリースする、3rdシングル「光福論」のジャケットビジュアルとMusic Videoが解禁された。

通常盤のジャケットは、未来に対する期待や不安といった様々な感情が織り交ざる様子を表現したカラフルで混沌とした世界観の中で、手探りで積み木を組み上げているビジュアルで”未知なる世界へ走り出す”という楽曲のメインテーマを描いた。また、期間生産限定盤のジャケットは、同曲がオープニング主題歌のTVアニメ『真・中華一番!』書き下ろし絵柄で、所狭しと並べられた料理の数々が思わず食欲をそそるビジュアルとなっている。同アニメは、10月11日(金)よりMBS・TBS・BS-TBS”アニメイズム”枠にて放送がスタート。

同時に「光福論」のMusic Videoも解禁された。一心不乱に中華料理を食べ続ける女性の姿に度肝を抜かれる作品となっているので、こちらも併せて是非チェックしてほしい。

「光福論」


 

しゅーず×センラ コラボ曲「シークレットシーグラス」のMV公開

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10月26日にZepp Tokyoでワンマンライブが決定しているしゅーずが、センラ(浦島坂田船)とのコラボ歌唱楽曲「シークレットシーグラス」のMVを公開した。

本作は8月に発売されたしゅーずの3rdアルバム『DEEPEST』のためにhalyosyが書き下ろした楽曲となっている。本作のイラストと動画は、イラストレーター・RAWHIAが担当している。

 

内田彩、ニューアルバム「Ephemera」リリース! 大宮ソニックシティで2DAYSワンマンライブ開催決定

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声優・アーティストの内田彩が、4thオリジナル・フルアルバム『Ephemera』を2019年11月27日(水)にリリースすることが決定。さらに、2020年3月14日(土)、15日(日)に埼玉・大宮ソニックシティ 大ホールにて『AYA UCHIDA 5th ANNIVERSARY LIVE』を銘打ったワンマンライブを開催することが発表された。

2014年11月12日(火)にアルバム『アップルミント』でソロデビューし、今年アーティストデビュー5周年を迎える内田彩。2019年3月に所属レーベル「ZERO-A」が活動休止し、日本コロムビアから放つ約2年2ヶ月ぶりとなるフルアルバムは、最新シングルよりTVアニメ『五等分の花嫁』エンディングテーマ「Sign」や「Candy Flavor」はもちろん、書き下ろしの新曲が色とりどりに収められる予定だ。

内田彩 - Sign (Official Music Video) | TVアニメ「五等分の花嫁」EDテーマ

なお、アルバムタイトルの『Ephemera(エフェメラ)』は、“一時的なもの”や“儚いもの”を意味する刹那的ワード。本日公開された新ビジュアルは、5周年にして彼女の新たな一面を感じさせる仕上がりとなっている。

さらに、2020年3月14日(土)、15日(日)の2日間にわたり埼玉・大宮ソニックシティ 大ホールにてワンマンライブ『AYA UCHIDA 5th ANNIVERSARY LIVE』の開催が発表。ニューアルバム『Ephemera』の発売にあわせて、CD封入と内田彩OFFICIAL SITEでチケット先行を受け付ける。新作をひっさげ5周年イヤーに贈る記念すべき単独公演は、CDを予約して先行予約で申し込んでおきたい。

なお、11月12日(火)に5周年記念フリーイベントが行われるほか、11月2日(土)には大阪・フェニーチェ堺 大ホールでのライブ、11月30日(土)には福岡・西日本総合展示場 新館にて行われる『北九州ポップカルチャーフェスティバル2019』への出演も発表されている。

今後発表される詳細続報を待とう。

ANARCHYが野村周平を主演に迎えて映画監督デビュー「言いたいことを言えない子たちがラップにはまる気持ちが分かる」

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1995年にラッパーとして活動を開始し、以降はメジャー、アンダーグラウンドの分け隔てなく、カリスマ的な人気を誇り続けるANARCHYが、映画監督デビューを果たす。人気俳優・野村周平を主演に迎え、本日より公開となった初監督作『WALKING MAN』は、吃音症のため自分の気持ちを表に出せないでいる主人公が、ヒップホップと出合いラップを通じて想いを言葉に変えていく物語だ。日本の社会問題に鋭く切り込む数々のラップ作品同様、この映画でも娯楽性を持たせながらも問題意識を観る者に投げかけてくる。今回は、ANARCHY監督に『WALKING MAN』について話を訊いた。

――物語の舞台となった川崎市は、人気ヒップホップクルーのBAD HOPの地元として知られ、2018年には磯部涼さんが著書『ルポ 川崎』で川崎中一殺害事件や同地のヒップホップカルチャーについて取材された場所でもありますね。

昔からヒップホップが熱い街ですよね。工場地帯の煙が出ている雰囲気が映画にも合っていたし、クラブのシーンも出てくるから、川崎市にしました。でも「この街にしよう」というこだわりはそこまでなかったので、「川崎市の話」と言うべきかどうかは迷いましたね。

――そんな川崎市で生まれ育った、吃音症の主人公・アトムがラップに目覚めるまでの苦闘を描いています。キーワードになるのが、アトムの苦境を見て、周囲が彼に押し付ける「自己責任」。昨今も、年金問題で「2000万円貯蓄しないと老後が苦しい」という話題で自己責任という言葉が出てきました。

自己責任という言葉の中に、理不尽さをたくさん込めました。いろんな逆境があって、それを跳ね返すものとしてラップやリリックがある。生まれながらの家庭環境、親など、子はすべてを選べない。何もかもが自己責任ではない。そういった思いが武器(ラップ)になる。この映画ではもっとも大切な言葉です。

(C)2019 映画「WALKING MAN」製作委員会

(C)2019 映画「WALKING MAN」製作委員会

――確かに、大人の理不尽さや暴力が描かれています。

でも別に、大人に対する不満とか、そういうものを描くつもりはまったくなかった。一方で若いときって、ちょっとしたことでも大人に反抗したくなる。それが正しいとか間違っているとか、そのときは分からないもの。若者からしたら大人の正しさも理不尽に感じるだろうし、その逆も然り。

――アトムもそういう場面に幾多も出会い、ラップにたどりつきます。最初は、吃音症なのでうまく言葉が出ないけど、少しずつ成長を遂げていきます。ちなみに今、吃音症のラッパー・達磨さんがいますよね。

そうそう、実際に出てきましたよね。この映画を作っているときだったから、びっくりしました。でも、そういった吃音であったり、いじめられていたり、いろんなものを背負っている子たちがラッパーにはいるんです。

――自閉症と闘うラッパーのGOMESSさんなどもいます。世間的にはラッパーってイケイケな感じの印象を持たれるけど、そうじゃない。

そうなんです。自由が欲しかったり、不満があったり、何か言いたいことが心の中にたまる。言いたいことがなかなか言えない子たちが、ラップにはまる気持ちは分かります。僕自身も若いころ、常にラップに怒りをこめていました。「何であいつらよりラップが上手いのに、売れへんねん」って(笑)。

――ハハハ(笑)。

単純な想いや出来事であっても、言葉にすることで何か変化が生まれる。それがラップの魅力。逆に、言いたいことが言えないのは良くないと思う。何でもかんでも文句を言えとは思わない。ただ、言葉にしないと、心ってなかなか見えない。ありがとう、愛しているとか。ちゃんと言わないとそこまでは相手には見えない。

(C)2019 映画「WALKING MAN」製作委員会

(C)2019 映画「WALKING MAN」製作委員会

――アトムもそうでしたもんね。演じられた野村周平さんへのラップ面の演出も力が入ったんじゃないですか。

どれだけカラオケでラップができても、人前でステージに立ち、動きをまじえてラップをするのって難しい。ただ、野村くんはきっちりできていた。

――野村さんはスケーターとしても知られていますし、ヒップホップも大好きなはずですよね。

うん、一緒に遊んでいたときから彼のラップは聴いていました。できることは分かっていたから、いろいろ相談もしやすかったですね。最初の監督作の主演が野村くんで本当に助かりました。

(C)2019 映画「WALKING MAN」製作委員会

(C)2019 映画「WALKING MAN」製作委員会

――この映画は、アナーキーさんが日本社会に対して訴え続けてきたことの地続きでもあると思うんです。震災時もかなり強いメッセージを発していましたよね。『GOD』とか特にそうですけど。10年以上前、第一次安倍内閣が「美しい国、日本」と発しましたけど、現状は……。この映画でも主人公たちが、その美しい日本が排出した廃品の回収を生業にしているけど、しかしまったくもって生活が苦しいし、何も買えない、自分の状況もきつい。アナーキーさんが憂いでいたこと、それでも何とか元気付けようとしている世の中がそのまま投射されている。

そうやって伝えたいことがなくなったら、僕はものを作ることをやめています。音楽も映画も、何だってそう。ラップ同様に言いたいことがなくなると、何もできない。だから常に僕は何かを言い続けたい。

――アトムが働いている会社の名前が「猫の手スマイル」だけど、実際は誰も彼らの家族に手を差し伸べてくれない。自己責任と言われる。震災時にANARCHYさんは、誰かに手を差し伸べる大切さを歌っていましたが。

誰かを助ける、助けてもらうことは生きる上で絶対に大事なこと。その気持ちはこの映画にも込めています。それを感じ取って欲しいです。

取材・文・撮影=田辺ユウキ

栗山民也インタビュー~眞島秀和×岸井ゆきのがぶつかり合う愛と家族の物語、舞台『月の獣』

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アメリカの劇作家、リチャード・カリノスキーが第一次世界大戦中に起きたアルメニア人迫害の実話に基づいて描いた『月の獣』(原題:Beast on the Moon)は、1995年にアメリカで初演されて以降、2001年にはフランス演劇界で最も権威のある「モリエール賞」を受賞するなど、世界各国で上演されている作品だ。日本では2015年に栗山民也の演出で初演され、今回は栗山の強い希望で4年ぶりの再演が実現したという。

物語は、第一次世界大戦終戦から3年経ったアメリカ・ミルウォーキーを舞台に、国を追われたアルメニア人のアラムと、同じくアルメニア人で彼の妻となる少女セタが、失われた家族を再建しようと、心に深い傷を抱えながら懸命に生きる姿を描いており、今公演では眞島秀和がアラム役、岸井ゆきのがセタ役でそれぞれ出演する。

栗山を強く引き付けるこの作品の魅力はどこにあるのか、栗山本人に話を聞いた。

「こういう作品をもっと上演して残していかなければ」

ーー今作を4年ぶりに上演することになったきっかけは何だったのでしょうか。

例えばヨーロッパだと、同じ作品をレパートリーとして1年間くらい上演することが当たり前に行われています。そうすると、演劇作品は生きものなので、やればやるほど強く美しくなっていくんです。日本の場合は、どうしても上演期間が限られていて、もっと長い期間やりたいな、と思っても劇場が空いていないとか、物理的にも不可能です。2015年に初演して以来、この作品はずっと体のどこかに引っ掛かっていました。それと、今は世界がとても危険な状況になっていると感じているから、文化という力を僕らはもう一度確認しなければ、という思いがあります。
演劇というのは、エンターテインメントの部分ももちろんありますが、もう一度人間を見つめる、世界のあり方をみんなで学ぶ、といったことも必要なんですよ。そういう意味でも、この作品は登場人物同士のセリフがお互いに刺さるし、それが観客にも強く響いて、こういう痛みを忘れないということこそ、とても大事なことだと思うんですよね。

『月の獣』栗山民也

『月の獣』栗山民也

ーーこの作品との最初の出会いを教えていただけますか。

以前、親友がパリに住んでいて、よく訪れていました。パリでは彼が毎晩のように舞台のチケットを用意してくれて、そのときに出会った演劇は僕の中で非常に貴重なものになっています。彼から「すごく面白いよ」と何本かの戯曲を渡された中に『月の獣』がありました。この作品はフランスでも上演されてモリエール賞を獲っていますが、そのときの主演俳優がフランスの太陽劇団(テアトル・デュ・ソレイユ)のシモンという俳優で、彼もまたアルメニア出身なんです。それで読んでみたら、やはりすごい作品でした。どこかで上演できないかな、と15年くらい温めていて。実は、僕はノートに40本くらいやりたい作品を書き留めてあって、でも演劇というのは時代と向き合うものだから、リストの上から順番にやるというわけにもいかなくて、「今これだ」と思える時を待つわけです。井上ひさしさんの作品とかも、上演するたびに「今のために書かれた作品だ」と思えるし、こういう作品をもっと上演して残していかなければならないですね。​

「俳優は自立した独自の個性を持っていることが大事」

ーーアルメニア人の青年・アラム役の眞島さんは、今年2月に栗山さんが演出した『チャイメリカ』にも出演していました。

例えば若い人の役でキャスティングをするときに、プロデューサーが持ってきた俳優の写真を並べると、みんな同じ顔に見えるんですよ。俳優は自立した独自の世界を持っていることが大事で、それが魅力に繋がるんです。“自分はこうなんだ”という確固たるもの、それは見た目だけじゃなくて、物の考え方とか想像力とか、そうしたものを持っている人こそが面白いのに、日本の教育ってそうじゃないですよね。みんな横並びで、そこから外れるといじめられる、ちょっと秀でると頭を叩かれてしまう。
眞島さんは、他の人とは何か違うものを持っていると思います。まっすぐ何か一つのものを見つめているような姿勢が、この作品のアラムと重なります。「広く浅く何でもできる」という人は結構いるんですけど、僕は「このことならとても得意」という人に出会いたいし、そういう人に魅力を感じます。こうした海外の戯曲を読むと、ものすごく特異な性格の人たちと出会えますが、日本だと登場するキャラクターに共感できることが要求される傾向があって、それは見ている人が共感して安心したいんでしょうね。自分が共感できない、脅かされる存在が作品の中に加味されると、それに対して壁を作ってしまうんでしょう。人間関係でもそうで、ケンカしない、恋をしない人が増えているというのは、自分が傷つきたくないからですよね。でも、ケンカと恋、この2つがなかったら人間はダメになっちゃう。ケンカと言ってももちろん、殴り合うってことじゃないですよ(笑)。違う意見の者同士が、ちゃんと自分の思うことで向き合うという意味です。​

『月の獣』ビジュアル写真

『月の獣』ビジュアル写真

ーー今作の2人は、ちゃんとケンカもしますね。相手役の岸井さんはどのように選ばれたのでしょうか。

昨年のNHKの朝ドラ『まんぷく』に出ているところを見たら、14歳という設定だったので実年齢もそれくらいなのかと思ったら、年齢は当時26歳と聞いて、騙されました。『月の獣』はものすごい時代背景を背負いながらも、悲劇の末端の傷ついた民族たちの等身大の話なので、岸井さんの持っているまっすぐな雰囲気や、ちょっと鋭いところなどが作品に合うと思いました。​

「忘却された人たちの声を再生するのが、僕たちの仕事」

ーー2015年の初演から今回キャストも変わるということで、演出的に何か変えてみようと思われている部分はありますか。

自分の視点の根っこみたいなものはあまり変わらないですが、実際にやってみると全然違ったものが見えてくるだろうし、ましてや人が変わるし、それらに対応して作っていきますから、以前とはやっぱり変わりますね。改めて向き合ってみると、聞こえてくる言葉の重度が全然違ってきたりもします。この作品からは、魂が燃えているような何かが感じられるんです。​

ーー血の繋がりのない者同士が家族になっていく、という物語は温かさもありながら、登場人物が孤児であることを考えると、やはり重たい内容ですね。

幸せを作るのも人間だし、悲劇を招くのも人間なんですよね。だから、その悲劇を生んだ事実を省みたり、検証したりする必要があるんです。僕はベルリンの街がとても好きで、もう何十回と訪れているのですが、ブランデンブルク門の近くに「ユダヤ人のための記念碑」があって、地下の情報センターにはユダヤ人の記録が残されています。そこに行って、僕は思ったんです。歴史から忘却された人たちの声をもう一度再生するのが、僕たちの仕事なんだ、と。その死者たちに劇作家が言葉を与えたらもう一度生きる事ができる、それを現代の俳優の肉体に宿すのが僕たちの仕事なんだ、ということを、特にヨーロッパの劇作家の本を読んでいると痛烈に感じます。​

『月の獣』栗山民也

『月の獣』栗山民也

ーー栗山さんはミュージカルなども手掛けていますが、今作のように少人数でやる劇を通じて、観客にどのようなことを伝えたいと思いますか。

僕はいつも、世の中で今欠けているものは何なのか、と考えていて、それを演劇という力で満たすことができないか、世の中に便乗するのが文化じゃないだろう、と思っています。最近は、余計なものは取り除いて、最後に残ったものだけがそこに存在する劇、俳優がただ立って魂から言葉を発している、そんな瞬間に出会いたいと思っています。僕のこの世界への入り口は能だったので、そこに戻って来た感じがしますね。最近のエンターテインメントは、観客に過剰に説明している舞台が多いんじゃないかな、と思ってしまいます。観客と俳優のちゃんとした出会いがあれば、何かがそこに必ず生まれる、というのが演劇だと思います。そんなふうにして、劇場に来てくれた観客と、演劇を通して語り合いたいですね。​

舞台『月の獣』イメージ映像

取材・文・撮影=久田絢子

7ORDER projectメンバーの森田美勇人主演で『7ORDER』のスピンオフ 『RADICAL PARTY -7ORDER-』の上演決定

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2019年12月27日(金)~12月29日(日)大阪・梅田芸術劇場 メインホール、2020年1月15日(水)~1月19日(日)東京・TBS赤坂ACTシアターにて、舞台『7ORDER』のスピンオフ作品『RADICAL PARTY- 7ORDER -』の上演が決定した。

7ORDER projectとは、安井謙太郎、真田佑馬、諸星翔希、森田美勇人、萩谷慧悟、阿部顕嵐、長妻怜央の7人が「Happy をみんなで作りあげていく」をモットーに、音楽、演劇、アート、ファッションなど一人ひとりがジャンルレスに挑戦していき、その経験や才能を混ぜ合わせ、自分たちなりの新たなエンターテインメントを創造していくプロジェクトだ。

プロジェクトの第一弾として、2019年8月22日から東京・天王洲の銀河劇場、9月5日から兵庫・AiiA 2.5 Theater Kobeで上演された舞台『7ORDER』のチケットは即日完売。27公演に及ぶ7人での初舞台は、大好評のうちに幕を閉じた。

そんな彼らが次に挑むのは舞台『7ORDER』のスピンオフ作品。主演は森田美勇人が務め、本作品では自らダンスの振り付けや、衣装のセルフプロデュースも担うことが決定。森田でしか表現することができない唯一の世界観を、ダンスと音楽、ファッションで作り上げる。そんな空間を生で体感して楽しもう。

『RADICAL PARTY -7ORDER-』は舞台『7ORDER』の新しいストーリーになる予定。森田の脇を固めるのは、ダンスキャリア20年、マドンナのバックダンサーとしてワールドツアーや、リオ五輪閉会式での日本プレゼン「SEE YOU IN TOKYO」にも参加したダンサー仲万美、僅か3歳でステージデビューし7歳でジュニア全米ダンス大会でチャンピオンを獲得。そして圧倒的なパフォーマンスを武器とする丞威、『ライオン・キング』(劇団四季)ヤング・シンバ役、平安神宮敷地内・時代祭館十二十二にて絶賛公演中の若きサムライが魅せるエンターテイメントショーKYOTO SAMURAI BOYS~起~に出演の福澤 侑、オーディション番組「キミモテロッジ~家づくりで声優オーディション⁉~」で熾烈なオーディションを勝ち抜き見事栄冠を手にした「ハイスクールチルドレン」の石橋弘毅、「ごくせん」「ウォーターボーイズ」「宇宙刑事ギャバン」等に出演し続ける石垣佑磨などが出演する。

森田美勇人 コメント

主演を務めさせていただきます森田美勇です。心から尊敬し憧れている方々と一緒に作品を創る機会をいただけたことにとてつもない幸せを感じています。そして、すべての人に感謝しています。ありがとうございます。『7ORDER』の仲間である「ミュート」が大切にしている「ダンス」で「音楽」で新たな空間を創っていく時間を、僕自身とても楽しみにしています。皆様とその時間を共有し、一緒に音楽にのれたらと思います。よろしくお願いします。

フジファブリック山内総一郎 新モデルのテレキャスターが完成、本数限定で販売

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フジファブリックの山内総一郎(Vo/Gt)の新モデルテレキャスター、Fender「SOUICHIRO YAMAUCHI TELECASTER “MAROON”」が完成、15本限定でデジマートで販売されることが決定した。

山内の故郷である大阪で、学生時代に毎日乗っていたという阪急電鉄からインスパイアされた、マルーンカラーのボディーに指板と共通のホワイトバインディングを搭載。ブラックフィニッシュのヘッドにホワイトボタンのペグという、フェンダーとしては珍しい仕様と、ニトロセルロースラッカーが相まって高級感溢れる仕上がりになっている。

本製品はTELECASTER THINLINEをベースに、山内総⼀郎の理想のハムバッカーサウンドを実現するために数々のこだわりが盛り込まれた特別仕様。ボディーにホンジュラスマホガニーを採用しながら、ダブル F ホール構造で空洞部分を増やしている。

さらに指板には、ブラジリアンローズウッドを採用するなどギターの“鳴り”への妥協の無さが伺える。そしてセミアコースティックのようなマイルドなサウンドを追求した結果辿り着いたJAZZMASTER BRIDGE WITH BIGSBY(R)VIBRATO TAILPIECE の組み合わせがこれまでに無かった新しいフェンダーサウンドを生みだす。

プレイ面で最も重要なネックは、厳選されたメイプルに本人が所有する54年製のテレキャスターからプロファイリングされたこだわりのグリップを採用。サウンドの要となるピックアップはネック、ブリッジともにティム・ショウが手がける SHAWBUCKE(TM)をセレクトし、木材の鳴りを生かしつつシングルコイルのギターと持ち替えてもギャップの少ない音になっている。

製品のより詳しい内容や販売に関する詳細はデジマート特設ページにて確認を。

フジファブリック山内総一郎

フジファブリック山内総一郎

 


海宝直人&昆夏美「ドタバタコメディーを楽しんで」 日本オリジナルの新作ミュージカル『ロカビリー☆ジャック』に挑む二人にインタビュー

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2019年12月にシアタークリエで開幕する新作ミュージカル『ロカビリー☆ジャック』。『SONG WRITERS』(13・15年)が好評を博した、森雪之丞(作、作詞、楽曲プロデュース)&岸谷五朗(演出)のタッグで送る注目作だ。ロカビリー音楽をテーマにした本作で作曲を手掛けるのは、斉藤和義、さかいゆう、福田裕彦と、豪華な顔ぶれ。キャストも、屋良朝幸、海宝直人、昆夏美、青柳塁斗、岡千絵、平野綾、吉野圭吾と個性豊かな面々が揃った。

SPICEでは、主人公の売れないロカビリーシンガー・ジャック(屋良朝幸)を支える、マネジャー・ビル役の海宝直人、ジャックと恋に落ちる女性シンガー・ルーシーに扮する昆夏美にインタビューを実施。『レ・ミゼラブル』(以下『レ・ミゼ』)でマリウス(海宝)とエポニーヌ(昆)として長年共演し、来年には『ミス・サイゴン』も控える二人の、息のあったクロストークをたっぷりとお届けする。

豪華クリエイターこだわりの衣裳&楽曲&濃厚キャラのTheコメディー!

ーーミュージカル『ロカビリー☆ジャック』にご出演が決まったときの、率直な感想から教えていただけますか?

海宝:日本でオリジナルミュージカルをつくるという、素敵な企画だと感じました。シンガーソングライターの斉藤和義さんが楽曲を提供されるというのは、ミュージカル界にも音楽業界にもセンセーショナルなことですよね。初めてご一緒する演出の岸谷五朗さんもエネルギッシュな方で、稽古が楽しみです。稽古を進めていく中で、台本も役者に合わせてどんどん変えていく方、と聞いているので、刺激的な現場になるだろうなと思っています。

:豪華なクリエイター陣ですよね。キャストも個性豊かで、素敵な作品になるだろうな、と予想しています。

昆夏美

昆夏美

ーーロカビリーファッションに身を包んだメインビジュアルが印象的です。撮影時は岸谷さんがスタイリストさんと一緒に衣裳を選ばれたとか。

海宝:そうなんです!

:スタイリストさんが作品の雰囲気に合ったものを何着も用意してくださって、岸谷さんを交えて、こっちの組み合わせの方がいいんじゃない?なんて話しながら決めていきました。舞台のビジュアル撮影ってシーンと静かで緊張することも多いんですけど、今回は音楽をジャンジャン流しながらの撮影で、楽しかったです。髪型も奇抜だけど、印象的でいいですよね。私の前髪も、どうしちゃったの?ってくらいクルッとしてます(笑)。

海宝:舞台のビジュアル撮影って、作品とのファーストコンタクトみたいなところがあるんですよ。まだ稽古も始まっていない、そこまで作品のことが分かっていない状態で、結構緊張するものなんです。今回もドキドキしながら撮影現場に入り、ヘアセットしてもらって、だんだんと立ち上がっていく髪の毛を見ていて……。

:海宝くんも髪型がクルッとしてるね。

『ロカビリー☆ジャック』チラシ

『ロカビリー☆ジャック』チラシ

海宝:そう、クルッと(笑)。完成したヘアメイクに、すごい!と思いながら、ちょっと恥ずかしい気持ちもありつつ撮影に挑みました。岸谷さんがすごく気さくな方で、「いいよー!カッコいいじゃん!」って乗せてくださり、楽しかったですね。初対面の屋良さんともツーショットを撮り、緊張しました。屋良さんが演じるジャックに、僕が演じるビルは憧れているという設定なんですが、屋良さん自身がすごくカッコよくてまさにジャックだなと。

:分かる! 屋良さんが出演していた『ドッグファイト』を観たんだけど、オーラがあって、舞台の真ん中にどっしりと立つ方だなと思った。

ーー台本を読まれて、どんな印象を持ちましたか?

:まさにコメディーですね。

海宝:そう、そして本当に面白い。それぞれの登場人物のキャラクターが濃くて、このメンバーが演じることで、もっと色濃くなるんじゃないかなって。詳しくはまだ言えないんですけど、(吉野)圭吾さんの役がすごい。

:チラシのビジュアルだけで、すでに只者じゃない感があるもんね。

左から 昆夏美、海宝直人

左から 昆夏美、海宝直人

海宝:実際に芝居が立ち上がったときに、すごく面白いことになるだろうなって思います。

:雪之丞さんの脚本が面白いんですよ。セリフにちょっとした合いの手が入って、クスッとさせられます。

ーータイトル通り、楽曲はロカビリーっぽい曲が多そうですか?

海宝:ロカビリーっぽい感じもありつつ、幅広いジャンルを感じさせる曲になりそうです。僕はまだ4曲しか聞いてないんですけど、今までのミュージカル曲とはちょっと違うテイストだなと。今デモ音源をいただいているのは、斉藤和義さん、さかいゆうさん作曲のものなんですけど、それぞれアーティスト、シンガーとして活躍している方のセンスを感じます。僕もバンドをやっているので、ミュージカルとは違ったアプローチができたらいいですね。

:私は今、2曲いただいていて、そのデモ音源は斉藤和義さんがギター1本で歌っているものなんです。最初聞いたときにすごい!CDみたい!って思っちゃいました。斉藤さんの楽曲の世界観を自分がどう歌いこなしていくか……、今までの自分にはない引き出しを開けないといけないなと思っています。

日本オリジナルのミュージカルは刺激的な挑戦

ーー新作、オリジナルのミュージカルに出演する意気込みを教えてください。

海宝:日本でオリジナルミュージカルを作っていくというのは、僕も今後やっていきたいことです。オリジナル作品に関われるのは役者としてすごく幸せなことなんですが、それでいて非常に怖い部分もあるんです。一から立ち上げていくわけなので、自分次第な面がありますから。今回、百戦錬磨のクリエイター陣、キャスト陣のなかで、自分がどれだけクリエイションできるか、緊張感を持って頑張っていきたいと思っています。こうやって、日本のオリジナル作品が作られて、ミュージカル界が活性化していったらうれしいですね。

海宝直人

海宝直人

:いかようにもできるところが、キャストとしての挑戦であり、楽しさであり、醍醐味だと思っています。この作品をちゃんとみなさんに楽しんでいただけるように、いい評価をいただけるようにしないと、という気持ちがこのカンパニーを一丸とさせるんじゃないかなと。私はあまりオリジナル作品の経験が多くないので、楽しみです。

海宝:いわゆる輸入モノの作品に出演することは、それはそれで勉強になるんです。ブロードウェイでオンに乗るまでに、様々なトライアウトをして、ブラッシュアップして上演されて。日本にやって来るときは一切隙のない状態で、海外から来た演出家に演出をつけてもらって、役者として勉強になることがたくさんある。オリジナル作品だと、昆ちゃんも言っていたように、自分たち次第ですから。僕は今年の初めに『イヴ・サンローラン』というオリジナル作品に出演したのですが、やっぱりすごくしんどい産みの苦しみみたいな部分もあって。自分たちが全力を尽くさないと、作品が立ち上がっていかないし、成立しませんから。名作と言われる『レ・ミゼラブル』や『ミス・サイゴン』などは、作品そのものがもう完成されている。だけど新作は、自分たちがクリエイトしていかないと、完成しない。すごく刺激的だなと思います。

:そうだね。『レ・ミゼ』や『ミス・サイゴン』のような、世界的にロングランされているものは、素晴らしい作品という大前提があって、役者もその力に後押しされるところがある。初演だと前例がないから、ゼロから作り上げて、ブラッシュアップして、深めていかないといけないわけで。この作品はコメディーだから、お客様の反応から「ここがウケるんだ!もっとやっていいんだ!」と気付かされることも多そう。私、コメディーって緊張するんです。今までクラシカルで、暗い物語ばっかり出演してきたから。

昆夏美

昆夏美

海宝:アハハ、たしかに(笑)。

:海宝くんは、コメディーの経験ある?

海宝:そんなにやったことないかな。僕も比較的暗い作品が多い。

:共演者の皆さんの間や、岸谷さんの切り込み方を見ながら、勉強していかないとね。

2019年の『レ・ミゼ』を総括!

ーーお二人とも、長丁場の『レ・ミゼ』公演、本当にお疲れさまでした。長年出演しているお二人から見た、2019年の『レ・ミゼ』はいかがでしたか。

:私は今年で4回目のエポニーヌだったんです。海宝君は3回目だっけ?

海宝:そう。昆ちゃん、もう大ベテランだね。

:いや、お局かも(笑)。今年は、マリウス役に二十歳の三浦宏規君、コゼット役に19歳の熊谷彩春ちゃんが入ってきて。エポニーヌにも本当にぴったりな屋比久(知奈)ちゃんが入って、私はすごく刺激を受けました。海宝君もそうだと思うんだけど、初心に戻れたんですよね。新キャストの方々が吹かせた新しい風を感じて、今までの固定概念を捨てて、エポニーヌをもう一度考えてみようって思えた年でした。

海宝:あと、演出補が、15、17年のエイドリアン・サープルさんから、19年はクリストファー・キーさんに変わったのが、大きかったです。マリウスって、毎年求められるものが変わるところがあって。今年のクリスさんのリクエストは、シンプルにリアルに伝えて欲しいというものでした。持っている情熱や思いは伝わっているから、もっと自然にシンプルにしても大丈夫だよ、と言われて。昆ちゃんも言っていたように、今年入った宏規は若くてフレッシュで、あの年代にしか出せないものが確実にあって。僕自身も最初にマリウスを演じた時の写真を見ると、あぁこんなに若かったんだな、と思うんです。実際の若さやフレッシュさにはかないませんから、今年は、若さを演技で作るのではなく役を掘り下げ、向き合ったマリウスでした。17年の時は、とにかくテンションを高く、パッションをぶつけてと言われていたので、今年は本当にシンプルな芝居になりましたね。改めて『レ・ミゼ』の奥深さを感じました。

海宝直人

海宝直人

:エポニーヌが最期を迎える「恵みの雨」で、多くの気付きをくれるのが海宝君のマリウスなんです。今年の札幌公演の初日で、改めて「あ、こういうことだったのか」と気付かされたことがあって。もちろん何度もやらせてもらっているので、自分の中で腑に落ちた状態で演じてはいるんですけど。海宝君とはずっと一緒にやらせていただいているからこその安心感と信頼がありますよ。私もそう思ってもらえていたらいいんだけど……。

海宝:思ってるよ!昆ちゃんの方が先輩なんだから!(笑)

:『レ・ミゼ』の話からはズレちゃうのですが、7月に放送された「FNSうたの夏まつり」で『ミス・サイゴン』の「世界が終わる夜のように」をデュエットした時も、海宝君は初役とは思えない完成度で歌っていて。皆さんご存知、さすが海宝直人!と思いました。

海宝:アハハ、ありがとう(笑)。

左から 昆夏美、海宝直人

左から 昆夏美、海宝直人

:どう来るんだろう、という不安は全くなくて、自然な流れで歌えて。15年から『レ・ミゼ』で一緒にやらせていただいた信頼があってこそですよね。

海宝:もう4年も経ったんだね。僕が15年に入った時は新キャストがすごく少ない年で。エポニーヌは、昆ちゃんの他に、笹本玲奈ちゃん、平野綾ちゃん、綿引さやかちゃんと4人いて。先輩エポニーヌたちに「失礼します!」という気持ちで緊張しながらやっていたよ。

:そんなことないでしょ?

海宝:すごく緊張していて、リードしてもらって頼りっぱなしだった。

:へー!

海宝:「恵みの雨」もそうだし、他のシーンも、もちろん決められた動きをしてはいるんだけど、昆ちゃんと芝居していると、その場で感じたことをお互いにやりとりして、リアルなコミュニケーションが出来てるって感じる瞬間がたくさんあってすごく楽しかったよ。

ーーお二人の信頼関係が垣間見えるエピソードをありがとうございます。来年の『ミス・サイゴン』を控え、まずは『ロカビリー☆ジャック』での共演が楽しみです。

海宝:そうですね、僕も楽しみです。

:屋良さんを第一に考える海宝君が見られるんじゃないかなと思います。今回は私との絡みはあんまりなさそうかな。

海宝:そうだね、役柄的にあまり一緒のシーンはないかも。

:私は、海宝君が屋良さんに翻弄される姿を、イチ観客として楽しもうかと思ってます。

海宝:僕は、不幸にならない、死なない、革命をしない昆ちゃんが楽しみ。

:そうだね(笑)。

海宝:明るいドタバタコメディーを、お客様に楽しんでいただきたいですね。

左から 昆夏美、海宝直人

左から 昆夏美、海宝直人

取材・文=永瀬夏海 撮影=荒川潤
<海宝直人>ヘアメイク:AKANE
<昆夏美>ヘアメイク:五十嵐友美、スタイリング:津野真吾(impiger)、衣装協力:GOLDY、RPKO

BiSH アイナ作曲モモコ作詞による新曲「リズム」MVフル解禁、緑色のカップ麺を食べる新ビジュアルも公開

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昨日10月10日に放送された『アメトーーク!』の「BiSHドハマり芸人」で7万ツイートオーバーし、トレンド1位を獲得するなど大きな話題となった“楽器を持たないパンクバンド”BiSHの新曲「リズム」のミュージックビデオがYouTubeでフル公開された。

新曲「リズム」は、アイナ・ジ・エンド作曲、モモコグミカンパニー作詞によるもので、本日0時よりApple Music / iTunes Store限定で先行配信がスタートしている。

ミュージックビデオは、先日の大阪城ホールワンマンでも映像演出を手掛けた山田健人(yahyel)がディレクションを担当している。

また、11月6日に発売するメジャー6作目となる両A面シングル「KiND PEOPLE / リズム」のアートワークも本日公開となった。「リズム」の世界観から一転、緑色のカップ麺を食べるメンバービジュアルとなっており、「KiND PEOPLE」がどのような楽曲なのか期待が高まる。

現在iTunesでは、本日いっぱいまでインディー時代の2作から7月に発売された最新アルバム『CARROTS and STiCKS』まで、全6作のアルバムが、1日限定300円で配信している。

 

PassCode、マイナビBLITZ赤坂公演 超満員ソールドアウトで全国ツアー開幕

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10月9日に、『PassCode CLARITY Plus Tour19-20』の初日公演を東京・マイナビBLITZ赤坂で行ったPassCode。そのソールドアウトとなった公演のライブ・レポートが到着した。

PassCode photo by Shingo Tamai

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女性4人組アーティストPassCodeが、全国13箇所15公演に及ぶ『PassCode CLARITY Plus Tour19-20』の初日を東京・マイナビBLITZ赤坂にて迎えた。白い新衣装で登場した4人は、新曲「ATLAS」のカップリング曲「Future’s near by」という意表を突いた選曲と、耳をつんざく爆音で、彼女たちの新たな旅立ちを強く印象づけるスタートを切った。展開が多く複雑な楽曲だが、会場を埋め尽くしたファンは大熱狂。さらに、「bite the bullet」「ONE STEP BEYOND」「AXIS」というゴリゴリの展開に、場内はいきなりとんでもない熱気に包まれた。

PassCode photo by Shingo Tamai

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同会場でのライブは3年9ヶ月ぶりとなる彼女たち。前回は完売することができなかったが、今回は見事に超満員のソールドアウト。南菜生は「来てくださってありがとうございます!」とフロアに向けて何度も感謝の言葉を投げかけた。

PassCode photo by Shingo Tamai

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PassCodeは、切り込み隊長としてフロアを煽動する南、しなやかなダンスと穏やかな笑顔で魅せる高嶋楓、凛としたボーカルで歌を引っ張る大上陽奈子、そして、国内随一のシャウトを轟かせる今田夢菜というキャラクターが持ち味のグループなのだが、今日はそれぞれがパフォーマンスのクオリティを高めてきたことで、いい意味で個人の差が少なくなっている。

PassCode photo by Shingo Tamai

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彼女たちのレベルアップは、「ATLAS」に収録されているもうひとつのカップリング曲「GOLDEN FIRE」でも顕著。この曲は「Future’s near by」と同様、ジェットコースターのように展開していく難易度の高い楽曲だが、4人は難なく歌いこなす。よりダイナミックに、より繊細に。より荒々しく、よりしなやかに。MCでは、4日前からとことん踊り込んできたせいで筋肉痛だという話を披露。その甲斐あってか、ツアー初日ということを忘れさせるほど、余裕のあるステージを繰り広げていた。そんな4人をバックで支えるのがMY FIRST STORYのドラマーKid'zを中心とした4名のバンドメンバー。彼らとの連携を高めることで、より大きなグルーヴがステージに生まれていた。

PassCode photo by Shingo Tamai

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PassCodeといえば、ラウドで複雑な楽曲をイメージするリスナーが多いと思うが、メロディで泣かせる曲も実は近年増えている。今日は、「It’s you」で起こった大合唱が実に感動的で、4人が見せる世界観の広がりを感じさせた。

PassCode photo by Shingo Tamai

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エンディングを飾った最新シングル「ATLAS」も美しいメロディが特徴的。しかし、今日のライブでその印象が激変した。メロディのよさは残しつつも、強烈なヘヴィダンスチューンの側面ものぞかせていた。元々、数々の名曲を持つ彼女たち。「ATLAS」収録の3曲が新たに加わったことで、セットリストにさらなる厚みが出た。そして、どの曲にも驚くほどの熱量が込められている。アイドルというだけで偏見の目で見られることが多いが、PassCodeは今、最もライブを目撃すべきグループだと断言できる。

PassCode photo by Shingo Tamai

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笑顔の裏に、ライブの現場で地道にファン層を拡大してきた4人の矜持が見えた90分。来年1月12、13日に新木場STUDIO COASTにて行われるツアーファイナルに向けて、見事なスタートダッシュを見せた。


文=阿刀 “DA” 大志 撮影=Shingo Tamai

PassCode photo by Shingo Tamai

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あいみょん、SHISHAMO、J-WAVE『SAISON CARD TOKIO HOT 100』10/13放送に出演

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クリス・ペプラーがナビゲートするJ-WAVE(81.3FM)のプログラム『SAISON CARD TOKIO HOT 100』の10月13日(日)の放送に、あいみょんとSHISHAMOが出演することが発表された。

同番組は、世界の音楽シーンからJ-WAVEが厳選するヒット100曲を4時間にわたってカウントダウンするプログラム。

当日は、「秋の逆電クイズ祭り」と題して、電話があれば誰でも参加できる「逆電バスター」を通常の2倍となる13時台、14時台、15時台、16時台の計4回開催。電話がつながり3択クイズに正解すると、iTunesカード、図書カード、旅行券1万円分の選べるチケットがプレゼントされる。

なお、SHISHAMOは14:10頃から、あいみょんは15:20頃からの出演予定となっている。

SHISHAMOレポート 大舞台をも通過点に、進み続ける3人が立った初のさいたまスーパーアリーナ

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SHISHAMO NO BEST ARENA!!! EAST  2019.9.28   さいたまスーパーアリーナ

「みんな、キラキラしています。こんなすごい景色を見せてもらえるなんて、今までバンドをちゃんとやってきて、良かったなと思っています」という宮崎朝子(Gt/Vo)の言葉には確かな実感がこもっていた。この思いは松岡彩(Ba)にも吉川美冴貴(Dr)にも共通するものだろう。SHISHAMOにとって、ワンマンとしては最大となる約1万3千人の観客が詰めかけた、さいたまスーパーアリーナ公演。1週間前の9月22日には大阪城ホールで“WEST”が開催されており、こんなにたくさんの人が集まったのは、バンドのこれまでの音楽活動の積み重ねの成果と言えそうだ。もちろん数字以外の部分でもバンドの進化は顕著に表れている。3人はこの日、スーパーアリーナの大きな空間を活かして、音楽性の高さとエンターテインメント性の高さを兼ね備えた、素晴らしいステージを展開していた。

SHISHAMO

SHISHAMO

ステージセットで特徴だったのは、メインステージから円形の花道が設けられていたこと。そしてその花道の先端部分にセンターステージがあり、花道に囲まれた前列中央のエリアにも観客が入っていたこと。すぐ近くからはるか遠くまで観客が見えるのは、演奏する側にとっても、嬉しい構造だろう。メインステージの両サイドと中央にはLEDスクリーンが設置され、オープニングではその両サイドのスクリーンに、シングル曲のミュージックビデオやライブ風景のコラージュ映像が映し出された。さらにメンバー3人のリアルタイムの映像に切り替わっていくと、3人が互いの背中に手を当てて気合いを注入し、円陣を組んでいる。ステージにかけるメンバーの思い、ライブ直前の緊張感などが伝わってきて、こちらまで身が引き締まっていく。

SHISHAMO・宮崎朝子

SHISHAMO・宮崎朝子

3人がステージ上に姿を現して始まったのは「恋する」。吉川のドラムで始まり、宮崎のギター、松岡のベース、そして観客のハンドクラップが加わっていく。ライブの始まりの高ぶりと、歌の中の恋に落ちる瞬間のときめきとが重なっていくような始まり方がスリリングだ。バンドは緊張感を集中力に変えて、エネルギッシュな演奏を展開し、観客が熱烈に応えていく。ステージ中央のスクリーンに“SHISHAMO!!!”の文字のロゴがデザインされたバックドロップが映し出されている。そのバックドロップの赤色が瞬時に水色に変わって、「ねぇ、」へ。布製ではなくて、LEDだからこその演出が新鮮だ。さらに「僕に彼女ができたんだ」も気迫あふれる演奏が続いていく。

SHISHAMO・松岡彩

SHISHAMO・松岡彩

6月にリリースされたベストアルバム『SHISHAMO BEST』を受けてのライブで、シングル曲、人気曲、代表曲を軸としたセットリストになっていて、老若男女、あらゆる層が楽しめるステージだ。客層も幅広くなっていると感じた。宮崎が「アリーナ席!」「スタンド席!」「男!」「女!」と声をかけると、威勢の良い声や柔らかな声があちこちから上がっていく。バンドは会場内の空気をしっかりコントロールして、アリーナという大きな空間に対応した演奏を繰り広げていた。グルーヴはさらにダイナミックで、歌もアンサンブルもニュアンスが豊かだ。身近な歌はすぐ近くに届いてきて、壮大な歌はどこまでも広がっていく。

「今日はベストアルバム記念のアリーナ公演となってます。ベストに入ってる曲、入っていない曲、いろいろやれたらと思っています」という宮崎の言葉に続いて演奏されたのはベスト盤には収録されていないが、SHISHAMOならではの魅力が詰まった曲、「きっとあの漫画のせい」。表情豊かな歌声としなやかさと歯切れの良さを兼ね備えたバンドサウンドが、気持ち良く響き渡っていく。松岡によるタオルの使用方法の説明で始まったのは「タオル」。1万数千枚のタオルが歌に合わせて、アリーナの中で同時にぐるぐる回る景色は壮観だった。アウトロでは宮崎と松岡が花道に出て、一周しながらの演奏。松岡の骨太なベースで始まったのは「BYE BYE」。ソリッドなギター、タイトなドラムが加わってのアンサンブルは切れ味抜群で、バンドサウンドのシャープかつクールな魅力も伝わってくる。

SHISHAMO・吉川美冴貴

SHISHAMO・吉川美冴貴

MCではステージに隣接する“わくわくエリア!!!”に3人が訪れたことも報告された。この“わくわくエリア!!!”は物販コーナーはもちろん、フードエリア、カラオケコーナー、写真撮影スポットなど、楽しいコーナーがたくさん用意されていた。ライブに来た人に、ライブ以外の時間も思う存分楽しんでほしいという、メンバー、スタッフの気持ちまでが伝わってくるようだ。楽しさ、親しみやすさとともに、奥深さが見えてくる曲もいくつか演奏された。10月リリースのニューシングルのカップリング曲「君の大事にしてるもの」もそんな曲のひとつ。嫉妬心や独占欲といった胸の中にあるダークな感情を、ファンキーなリズムに乗せて表現した曲とも解釈出来そうだ。恋愛の光だけでなく、闇の部分に鋭く切り込んでいく歌声にゾクゾクした。こうした振り幅の大きさ、自在さもSHISHAMOの魅力のひとつだ。宮崎のアコースティックギターで始まった「夏の恋人」は、深みと余韻を備えた歌声とスケールの大きな演奏が広い空間に見事に映えていた。続いての「夢で逢う」もSHISHAMOのディープな魅力が詰まっているナンバー。抑制の効いた始まり方をしながら、後半に進んでいくほどに、悲痛な思いがむきだしになっていく。オルタナティブロックに通じるようなディープなエネルギーが渦巻く歌と演奏がズシッと響いてきた。

SHISHAMO

SHISHAMO

見上げるようなアングルで、歩きながら撮影したと思われる映像がスクリーンに流れ、センターステージで宮崎が椅子に座って、ひとりでアコースティックギターの弾き語りで新曲を披露する場面もあった。つぶやき声のようなさりげない歌声で始まり、繊細なギターが入ってくる。何気ない日常の中にあるかけがえのない瞬間が浮き彫りになってくるような素直な歌声が魅力的だ。さらに松岡、吉川もセンターステージに移動して、アコースティックギター、グロッケンとシェイカー、カホンというアコースティック編成で3曲が披露された。「熱帯夜」は過去にもアコースティック・アレンジで演奏されているが、この日はさらに洗練されていた。絶妙のタイム感を備えた演奏、優美なハーモニーがいい。3人の息もぴったり合っている。3人は向かい合って座って、演奏していたのだが、その3人を包み込むように、テント状に張り巡らせられた赤いスポットライトも綺麗だった。

SHISHAMO

SHISHAMO

「実はこのステージ、回るんです」(宮崎)、「人力という名の最新テクノロジーを駆使してます」(吉川)とのことで、1曲ごとにセンターステージが回転する仕組みになっていて、様々なアングルから3人の演奏を楽しめるようになっている。3人の麗しいコーラスをフィーチャーした「恋」、夢見る乙女心をみずみずしく表現していく「ロマンチックに恋して」と、SHISHAMOのアコースティックな世界も魅力的だ。花道が七色に光るなど、照明もロマンチック。観客も歌の世界に酔いしれて、聴き入っていた。

SHISHAMO

SHISHAMO

メインステージに戻ってからは、バックドロップが水色になって、ブルーのライトに照らされながらの「水色の日々」、せつなさの漂う歌とハーモニー、歌心あふれる演奏が見事な「ほら、笑ってる」と、シングル曲が続けて演奏されて、会場内の空気がポップに染まっていく。

SHISHAMO

SHISHAMO

SHISHAMOのワンマンライブでお馴染みとなっているMCコーナー、“吉川美冴貴の本当にあった○○な話”では、吉川がエゴサーチが大好きということで、デビューしてからこれまでで、最も深く記憶に刻まれたTwitterベストが紹介された。「SHISHAMOの缶バッチを見た外国人の先生がガール、ガール、ボーイと言っていました」などの自虐的なネタの数々で会場内が笑いに包まれてなごんだ後に、宮崎と松岡がヘッドセットを付けて登場した。

「どうしたら、みんなのそばに行けるかなと考えて、ヘッドセットに挑戦しようと決めました」と宮崎。ヘッドセットを使うことで、間奏以外でも、歌いながら自由に動くことが可能になる。花道を歩きながら「OH!」が演奏されて、観客もシンガロングで参加。<汗だくで何が悪い>という歌詞とシンクロするような全身を使ってのパフォーマンスだ。ともに歌い、歌に込められた思いを共有することで、会場内に連帯感のようなものが生まれていく。さらに「量産型彼氏」と「ドキドキ」へ。観客もコール&レスポンスやハンドクラップで応えていた。宮崎と松岡が花道を歩き、時には向き合ったり、縦に並んだりして演奏する構図が新鮮だった。ヘッドセットでの演奏終了後に吉川からこんな言葉もあった。

SHISHAMO

SHISHAMO

「うらやましいんですよ、二人が縦横無尽に動いてるのが。さすがにドラムは難しいんですが、いつか演奏しながら、みなさんのところに寄っていくことをやってみたいです」(吉川) ちなみにヘッドセットを付けた2人の感想は「ゼイゼイ言うね」(松岡)、「酸素が足りないね。でも楽しかったね」(宮崎)とのこと。ヘッドセットを使うことでフットワークは軽くなるが、音質に関してはマイナス面もあるし、呼吸音を拾ってしまうなどのデメリットもある。それでもあえてヘッドセットを使用したのは、アリーナという大きな空間だからこそ、観客の近くに行って歌を届けたい、一緒に参加して楽しく盛り上がってもらいたいというバンドの気持ちの表れでもあるだろう。バンドは大きな視野に立って、この演出を選択していたのではないだろうか。

SHISHAMO

SHISHAMO

メインステージに戻って、ラストスパートで「君と夏フェス」「君とゲレンデ」と、全員参加型の曲がたて続けに演奏されていく。一瞬にして夏から冬へ。そんな展開も気持ちいい。本編最後に演奏されたのは「明日も」だった。銀色のテープが発射されて、観客が握りしめたテープが揺れる中、会場内の全員を鼓舞していくような熱くて、暖かくて、力強い歌と演奏によって、アリーナ内に爽快感と開放感と躍動感が充満していく。SHISHAMOにとっては観客が、観客にとってはSHISHAMOが、前に進んでいく上での大きな原動力となっているのだろう。アンコール時に松岡が、「みなさんが楽しそうな表情で観てくれたので、私も楽しく演奏することが出来ました」と言っていたのだが、この日のステージは双方向のエネルギーの交換会でもあったのではないだろうか。ミラーボールの光が降り注ぎ、エンディングではメリハリの効いた照明も一体となった気迫あふれる演奏が展開された。本編は気迫でスタートして、気迫でのフィニッシュとなって、熱烈な拍手が起こった。

SHISHAMO

SHISHAMO

「アンコールなのに、まだこの景色に慣れません。いい景色です。ありがとうございます」という宮崎のMCに続いて、2019年から20年にかけてのワンマンツアーの開催が発表された。さらにサプライズで、2020年8月9日に等々力陸上競技場で『SHISHAMO NO 夏MATSURI!!! ~おまたせ川崎2020~』が開催されることも発表されて、悲鳴にも似た歓声と大きな拍手が起こった。その反応を見て、吉川が涙する場面もあった。
「リベンジできることももちろん嬉しいんですが、みんなが声をあげてくれて、待っててくれたんだなというのが一瞬でわかって、嬉しかったです」と吉川。2018年7月に予定されていた『SHISHAMO NO 夏MATSURI!!! ~ただいま川崎2018~』が台風のために中止になったという経緯がある。バンドは大きなアクシデントを糧にし、悔しさをバネにして活動してきた。“ただいま”という言葉が“おまたせ”に変わって、2年分の成長も反映した素晴らしいライブとなっていくのは間違いないだろう。

SHISHAMO

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「この日に向けて、頑張っていけたらと思っています」という宮崎の言葉に続いて、アンコールでは10月にニューシングルとしてリリースされる「君の隣にいたいから」が演奏された。もともとは『第86回NHK全国学校音楽コンクール』中学校の部の課題曲として制作された曲だが、この場所、この瞬間にもぴったりだ。柔らかな歌声、ジェントリーなユニゾンのギター、味わい深いベース、体温のあるドラムがフレンドリーな空気を生み出していく。爽快な風が吹き抜けていくようなエンディングも鮮やかだった。メンバーそれぞれが全力を投入してやりきったからこその清々しさが漂う。鳴り止まない拍手の中で、3人は手を繋いで、お辞儀して挨拶した。

SHISHAMO

SHISHAMO

集大成というよりも通過点、転換点。そんな言葉を使いたくなったのは、バンドのさらなる可能性の大きさを感じさせるライブだったから。そして3人がアリーナ・ワンマンに果敢に挑んでいく意志と姿勢とが、この日演奏された曲たちに、観客への思いとともに、闘志や勇気を注ぎ込んでいると感じたからだ。バンドの足腰はさらに強靱になり、見えてくる景色はさらに壮観なものになっている。ひとつの山を越えると、また次の山が見えてくる。SHISHAMOはさらにたくさんの笑顔に会うべく、前に進み続けている。


取材・文=長谷川誠

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